60代でも、ハローワークを通じて公的職業訓練(ハロートレーニング)を受けられます。職業訓練には原則として年齢制限がなく、受講料は無料です。ただし、雇用保険の受給資格の有無で入口が分かれ、65歳以上は手当の扱いも変わります。
老後の収入に不安があり、資格を取って働き続けたいと考える60代は少なくありません。この記事では、2026年10月4日時点で確認できた情報をもとに、受講できる人の条件、受け取れる手当の金額、取得を目指せる資格、申込みの流れを順に整理します。読み終えるころには、自分がどの訓練の対象になりそうか、窓口で何を聞けばよいかがつかめるはずです。

60代の職業訓練に年齢制限は原則なし、63歳で挑戦した体験記もある
結論から言えば、年齢だけを理由に職業訓練を断られることはありません。職業訓練には原則として年齢制限がなく、ハローワークが受講の必要性を認めれば、60代の人も受講できます。
実際に、63歳で職業訓練に挑戦した体験記が公開されています。そこには、失業手当をもらいながら、受講料は無料で質の高い訓練を受けられ、交通費まで支給されるという内容が書かれています。60代の受講者は特別な存在ではありません。
県立高等技術校の「福祉サービス資格取得コース」では、受講者の年齢層が17歳から60代までと幅広く、退職後のセカンドキャリアのために受講する人もいます。10代から60代までが同じコースに通う例があること自体が、申込みを考える材料になります。
注意したいのは、年齢制限がないことと、希望のコースに必ず入れることは別だという点です。コースごとに募集条件があり、選考もあります。この点は後半の「選考」の節で詳しく触れます。
ハロートレーニングは2種類、雇用保険を受給できるかどうかで入口が決まる

ハロートレーニングとは、求職者を対象に、希望する仕事に就くために必要な職業スキルや知識を身につけてもらう公的な職業訓練の愛称です。受講料は無料で、テキスト代などは自己負担になります。
訓練は大きく2種類あります。どちらを受けるかは、雇用保険を受給できるかどうかでほぼ決まります。
| 項目 | 公共職業訓練(離職者向け) | 求職者支援訓練 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 雇用保険を受給している人 | 雇用保険を受給できない求職者 |
| 実施主体 | 県立高等技術校やポリテクセンターなど | 民間の訓練機関(厚生労働大臣の認定を受けて実施) |
| 受講中の生活支援 | 基本手当の延長、通所手当、受講手当 | 要件を満たせば職業訓練受講給付金(月10万円) |
| 入口 | ハローワーク | ハローワーク |
表のとおり、どちらも入口はハローワークです。求職申込と職業相談を済ませ、コースを決めて申込みをするという流れは共通しています。自分がどちらに当てはまるのかは、窓口で相談すれば整理してもらえます。
公共職業訓練の受講条件は「受給資格者証」「求職申込」「就職の意思」の3つ
公共職業訓練を受けるには、雇用保険受給資格者証を持っていて、求職申込を済ませていることが前提になります。そのうえで、働く能力と意思があること、そして職業訓練を受けることが再就職に必要な支援だとハローワークに認められることが求められます。
申込みの際には、ハローワークで入手できる申込書、写真、雇用保険受給資格者証を用意します。まず住所を管轄するハローワークで求職申込をして、制度の説明を受けます。窓口は住所の管轄で決まっているため、最初に自分の管轄のハローワークを調べておくと手戻りがありません。
受講の形にも種類があります。自分で選ぶだけでなく、ハローワークの指示(受講指示)を受けて訓練を受ける形になる場合もあります。この受講指示を受けた雇用保険受給者には、後で説明する手当が出ます。
訓練を受けると基本手当が延長される、所定給付日数150日・6か月の例で約102万円
雇用保険の受給資格がある60代の退職者が公共職業訓練を受けると、訓練が終わるまで基本手当が延長されます。この仕組みを訓練延長給付と呼びます。
具体例として、失業手当の所定給付日数が150日の人が6か月の訓練を受けた場合に、約102万円の延長給付が受けられるという試算があります。訓練を受けずに給付が終われば手元に入らないお金なので、手当の面でも受講に意味があります。ただし、この金額は一例です。実際の額は、離職前の賃金、年齢、残りの給付日数で変わります。自分の場合はいくらになるのか、個別の試算はハローワークで行ってください。
訓練が始まると、給付制限期間が解除されます。事前に必要な手続きを済ませておけば、訓練終了まで基本手当の支給が延長されます。「手続きを事前に済ませておく」という条件が付く点は見落としがちです。訓練が始まってから慌てることのないよう、申込みの段階で窓口に確認しておくのが安全です。
雇用保険受給者がハローワーク所長から受講指示を受けて訓練を受ける場合、訓練開始日以降、訓練が終わるまで、基本手当、通所手当、受講手当が支給されます。ただし、雇用保険の給付日数が残っていることなど所定の要件を満たさなければ、これらの給付を受けられないことがあります。残りの日数が少ない人は、受講前に必ず確認してください。
求職者支援訓練の給付金は月10万円、受け取るための8つの要件

雇用保険を受給できない人向けの求職者支援制度では、月10万円の生活支援の給付金を受けながら、無料の職業訓練を受けられます。この給付金が職業訓練受講給付金です。
給付金の要件を満たさなくても、無料の訓練そのものは受講できます。収入が一定額以下であれば、在職中でも給付金を受けながら受講できます。働きながら学び直したい人にも道が開かれています。
給付金の支給要件は、次の8つをすべて満たすことです。
| 番号 | 要件 |
|---|---|
| 1 | 本人収入が月8万円以下 |
| 2 | 世帯全体の収入が月25万円以下 |
| 3 | 世帯全体の金融資産が300万円以下 |
| 4 | 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない |
| 5 | すべての訓練実施日に出席している(やむを得ない理由がある場合でも、支給単位期間ごとに8割以上の出席率がある) |
| 6 | 世帯の中に、同時にこの給付金を受給して訓練を受けている人がいない |
| 7 | 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により特定の給付金の支給を受けたことがない |
| 8 | 過去6年以内に、職業訓練受講給付金の支給を受けていない |
要件2の世帯収入については、確認した資料のあいだで数字が食い違っていました。月25万円以下と書かれたものと、月30万円以下と書かれたものがあります。ここでは25万円と記しましたが、実際の基準は、厚生労働省の最新の案内とハローワークの窓口で必ず確かめてください。制度の数字は改定されることがあるため、古い資料を鵜呑みにしないことが大切です。
要件3と4は、老後の資産状況に直結します。世帯の金融資産が300万円を超えていたり、住んでいる家以外に土地や建物を持っていたりすると、給付金は受け取れません。それでも無料の訓練は受講できるので、給付金がないから諦めるという判断は早計です。
年金収入のある60代は、本人収入と世帯収入の判定に関わる可能性がある
60代の場合、年金収入がある人は、本人収入や世帯収入の判定に関わる可能性があります。年金をどう扱うかは個別の事情で変わりうるため、必ずハローワークで確認してください。
この判定は、給付金を受け取れるかどうかに直結します。本人収入は月8万円以下という基準があるので、年金の月額によっては要件を満たさない可能性があります。自己判断で「年金があるから無理」と決めつけず、窓口で金額を示して確認するのが確実です。逆に、「年金は収入に入らないはず」と決めつけて申込みを進めるのも危険です。
給付金の内訳は受講手当月10万円、通所手当は上限42,500円、寄宿手当は10,700円
職業訓練受講給付金は、1か月ごとに次の手当の合計額が支給されます。
| 手当 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 職業訓練受講手当 | 生活費の支援 | 月10万円(上限は12か月分、120万円) |
| 通所手当 | 訓練施設までの交通費 | 月額の上限は42,500円 |
| 寄宿手当 | 住まいに関わる手当 | 原則として月10,700円 |
受講手当は最長12か月分で、合計120万円が上限です。通所手当は訓練施設までの交通費にあたり、月額の上限は42,500円です。
出席の条件も押さえておきましょう。すべての訓練実施日に出席していることが原則です。やむを得ない理由がある場合でも、支給単位期間(1か月ごと)で8割以上の出席率が求められます。8割を下回ると、給付金を受けられなくなります。体調を崩しやすい60代にとって、この8割という数字は軽くありません。通院の予定がある人は、受講前に通院日と訓練日が重ならないか確認しておくと安心です。
65歳以上は基本手当ではなく一時金に変わり、選択肢は求職者支援訓練が中心になる
65歳以上で離職した場合、受け取れるのは基本手当ではなく、高年齢求職者給付金という一時金です。この給付金は、被保険者であった期間が1年以上の場合、基本手当日額の50日分になります。
この違いは、訓練の選び方にも影響します。65歳以上は失業保険(基本手当)を受けられないため、延長給付の対象になりません。訓練中の延長給付はなく、通所手当も原則ありません。そのため、65歳以上の人にとって現実的な選択肢は、無料で受けられる求職者支援訓練が中心になります。給付金の要件を満たせば、月10万円の受講手当を受けながら学べます。
65歳未満と65歳以上では、受け取れる支援の形が違います。自分の年齢でどの制度が使えるのかは、窓口で確認するのが確実です。
ハローワークで取れる資格の例は、介護職員初任者研修、医療事務、パソコン関連
求職者支援訓練で目指せる資格やスキルとしては、次のような例があります。
| 分野 | 例 |
|---|---|
| 介護 | 介護職員初任者研修、介護サービス科(6か月) |
| 事務 | 医療事務、パソコン・OA関連、オフィスパソコン総合科(3か月) |
| ビジネス | ビジネスアプリケーション基礎科(3か月) |
| デザイン | Photoshopクリエイター能力認定試験(スタンダード、エキスパート) |
| 建物管理 | ビル管理科(6か月) |
訓練期間は3か月から6か月のコースが多く、基礎コースと実践コースに分かれます。基礎コースは、社会人としての基礎的な能力や技能を短期間で身につけるコースです。実践コースは、就きたい職種で必要になる実践的な技能を身につけるコースです。
パソコン未経験の60代なら基礎コース、すでに介護や建物管理などの志望職種が決まっているなら実践コースが合います。資格ではなく「就職に必要な技能」を学ぶコースもあるので、資格の名前だけで選ばないことが大切です。
介護職員初任者研修は約3か月・約400時間、修了後3か月以内の就職率は約90%の例がある
60代の受講者もいる資格として、介護職員初任者研修があります。県立高等技術校の公共職業訓練「福祉サービス資格取得コース」では、約3か月間(約400時間)の訓練で、介護職員初任者研修修了証を取得できます。
カリキュラムは、学科、実技、就職支援、実習の4本立てです。学科では介護の基本や障がいの理解を学びます。実技では、移動、移乗、入浴、排泄などの介護を身につけます。さらに、介護施設での実習が1か月程度あります。修了前には、学科と実技の試験があります。
このコースの令和4年度(2022年度)の就職率は、修了後3か月以内で約90%でした。定員は12名です。定員が12名と少ないため、希望者が多ければ選考で不合格になる可能性があります。これは1つの県立高等技術校の例なので、他の地域のコースにそのまま当てはまるわけではありません。
退職後のセカンドキャリアのために受講する人がいるという点は、60代にとって心強い情報です。介護の仕事を目指す場合、資格の勉強と並行して、施設での実習を1か月程度経験できます。
シニアに選ばれやすい警備、ビル管理、電気設備のコース
シニア向けの職業訓練では、警備員のコースがよく開講されています。
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)のポリテクセンターなどでは、ビル設備サービス科(訓練期間6か月)、ビル管理技術科、電気制御技術科、電気設備技術科といったコースが案内されています。ビル管理員、ビル施設管理者、ビル・建物清掃員に関係するコースもあります。
建物の管理や設備の仕事に関わるコースが、訓練期間6か月などの形で並んでいます。コースの有無や募集時期は地域によって異なります。自分の住む地域で開講されているかどうかは、ハローワークの窓口か、各訓練施設の案内で確かめてください。
55歳以上向けの就職支援講習は、最終日の合同面接会が就職につながる
東京などでは、55歳以上の人のための就職支援講習が実施されています。警備や介護職員初任者研修などのコースが開設されています。
この講習の特徴は、講習の最終日にハローワーク主催の「合同面接会」がセットになっている点です。学んだ直後に企業と面接できるため、就職につなげやすい仕組みです。60代で再就職を目指す人は、この講習が地域にあるか調べてみる価値があります。
ただし、東京など一部の地域の例です。お住まいの地域に同様の講習があるかどうかは、ハローワークに確認してください。50歳以上の人を対象にした特別な支援の取り組みも用意されています。
申込みから受講までの4段階、書類選考と面接と筆記試験がある

申込みから受講までの流れは、次の4段階です。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | ハローワークで求職申込をし、職業相談を受ける |
| 2 | 訓練の見学や相談を経て、コースを決めて申込みをする |
| 3 | 書類選考、面接、筆記試験を受ける |
| 4 | 合格後、ハローワークで受講に向けた手続きをする |
選考方法は、筆記試験と面接が基本です。応募倍率や定員は、コースや地域で異なります。具体的な数字は、管轄のハローワークや各都道府県の訓練案内で確認する必要があります。
選考がある以上、希望者全員が入れるわけではありません。60代の人は、志望動機を具体的に話せるよう準備しておくと安心です。見学の機会があれば、訓練の雰囲気や設備を確かめられます。見学で気づいた疑問を面接で話せば、受講の意欲も伝わります。
60代が窓口に行く前に押さえておきたい3つの確認事項
ここまでの内容を踏まえ、窓口に行く前に整理しておきたいことは3つあります。
1つ目は、自分が公共職業訓練と求職者支援訓練のどちらに当てはまるかです。雇用保険を受給している人は公共職業訓練、受給できない人は求職者支援訓練が中心になります。
2つ目は、給付金の要件です。本人収入、世帯収入、金融資産、出席率の4点は、とくに60代の生活状況と重なりやすい項目です。年金収入がある人は、金額を持参して窓口で判定してもらってください。
3つ目は、希望コースの募集要項です。年齢だけで断られることはありませんが、コースごとの募集条件や選考があります。訓練は就職を目指す制度なので、受講後の就職支援も含めて、ハローワークと連携しながら進めることになります。
60代の職業訓練についてよくある疑問
年金をもらっていても受講できるのでしょうか。無料の訓練そのものは受講できます。ただし、月10万円の給付金は、本人収入が月8万円以下などの要件があり、年金の扱いは個別の事情で変わります。窓口で確認してください。
65歳を過ぎていても受講できるのでしょうか。年齢制限は原則としてありません。ただし、65歳以上は基本手当ではなく高年齢求職者給付金になるため、訓練中の延長給付や通所手当は原則ありません。無料で受けられる求職者支援訓練が主な選択肢になります。
資格が取れなくても就職に役立つのでしょうか。求職者支援訓練には、資格の取得よりも、就きたい職種で必要な実践的な技能を身につけるコースがあります。資格名だけで判断せず、コースの内容を確かめてください。
まとめ:60代の職業訓練は年齢より「雇用保険の有無」と「給付金の要件」を先に確認する
60代でも、ハローワークを通じて職業訓練を受けられます。受講料は無料で、条件を満たせば月10万円の給付金を受けながら学べます。介護職員初任者研修、パソコン、医療事務、ビル管理などの技能や資格を目指せます。
先に確認すべきなのは、年齢ではなく、雇用保険の受給資格の有無と、給付金の要件です。65歳以上は手当の扱いが変わるため、とくに注意が必要です。世帯収入の基準額のように、資料によって数字が食い違う項目もあるので、最新の情報は厚生労働省の案内とハローワークの窓口で確かめてください。
最初の一歩は、最寄りのハローワークで求職申込と職業相談をすることです。そこから、自分に合う訓練の種類とコースが見えてきます。
訓練校に通わずに講座で資格を取る場合は、教育訓練給付金で受講料の一部が戻ります。申請の流れは教育訓練給付金で資格を取る方法を参考にしてください。








