老後に資格を取ると補助金はいくらもらえるのか

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定年後に資格を取るとき、講座の受講料に対する公的な補助金は、区分によって20%から70%まで戻ってきます。一般教育訓練給付金なら上限10万円、専門実践教育訓練給付金まで条件が揃えば年間で最大56万円が支給される計算です。老後の資格取得にかかる費用の相場と、実際にいくら手元に戻るのかを、区分ごとの給付率と資格別の目安から整理していきます。

目次

教育訓練給付金は3区分あり給付率が20%から70%まで開く

教育訓練給付金とは、雇用保険の被保険者だった人が厚生労働大臣の指定する講座を修了した場合に、支払った費用の一部がハローワークから支給される制度です。会社員時代に雇用保険へ加入していた期間があれば、退職後も一定期間内なら利用できることがあるため、定年退職者やセカンドキャリアを考える50代、60代にも関係の深い制度になります。

区分は一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金の3つに分かれていて、給付率も上限額も対象講座もそれぞれ違います。同じ「資格を取る」という行為でも、選ぶ講座がどの区分に指定されているかで、戻ってくる金額は数倍変わることがあります。

一般教育訓練給付金は受講料の20%、上限10万円が戻る

一般教育訓練給付金は、対象講座を受講し修了すると受講費用の20%、上限10万円が支給される制度です。受講料が20万円の講座なら4万円、50万円の講座なら上限の10万円が戻る計算になります。3区分のうち給付率はいちばん低いのですが、対象講座の数は多く、簿記やファイナンシャル・プランニング技能士(FP)の一部講座など、比較的取り組みやすい資格が含まれています。

特定一般教育訓練給付金は40%、宅建士講座で使われることが多い

特定一般教育訓練給付金は、速やかな再就職や早期のキャリア形成に資する講座が対象で、受講費用の40%、上限20万円が訓練修了後に支給されます。2024年10月1日以降に受講を開始した講座では、資格取得などをした上で修了から1年以内に雇用された場合、追加の給付を受けられる仕組みも導入されました。宅地建物取引士、いわゆる宅建士のような業務独占資格系の講座がこの区分に指定されているケースが多く、老後の再就職を見据えて宅建を目指す人にとって現実的な選択肢になります。

専門実践教育訓練給付金は最大70%、上限年56万円まで届く

専門実践教育訓練給付金は3区分のうちいちばん給付率が高く、受講者が支払った教育訓練経費の50%、上限は年間40万円が支給されます。修了後1年以内に、その教育訓練で取得した資格などを活かして正社員として雇用された場合は、教育訓練経費の70%、上限年間56万円まで追加支給されます。介護福祉士や社会保険労務士、看護師などの専門性の高い国家資格の養成課程がこの区分に該当することが多く、給付額のインパクトも大きくなります。年間の受講費用が80万円かかる講座なら、修了段階で40万円、就職要件を満たせばさらに16万円が上乗せされ、合計56万円が戻る計算です。

FP2級と簿記2級は数万円、介護福祉士は100万円超まで相場が開く

老後に人気の高い資格について、費用相場と給付金を使った場合の実質負担の目安をまとめると、次のようになります。

FP2級は通信講座の受講料が8万円から11万円程度で、一般教育訓練の対象なら20%、1.6万円から2.2万円程度が戻ります。老後の資産運用やライフプラン設計に直結する知識が身につくため、資格そのものというより老後資金対策として選ぶ人も少なくありません。

簿記2級はWeb通信クラスで6万円前後の講座があり、一般教育訓練の対象なら1.2万円程度が戻ります。経理や事務職での再就職を目指す層に根強い人気があり、費用と給付のバランスが取りやすい資格の一つです。

宅建士は講座費用が数万円から20万円程度まで幅があり、特定一般教育訓練に指定されている講座なら40%、上限20万円が支給されます。受講料15万円の講座であれば6万円が戻る計算です。

介護福祉士は養成課程の学費が数十万円から100万円を超えることもありますが、専門実践教育訓練の対象なら50%、就職要件を満たせば70%、上限年間56万円まで支給されます。介護業界は人材不足が続いていて、シニア世代の再就職先としても現場のニーズが高い状態が続いています。

社会保険労務士は受験対策講座の費用が10万円台から20万円台で、専門実践教育訓練の対象講座なら50%から70%の給付が期待できます。マンション管理士や管理業務主任者は講座費用が数万円程度からあり、給付金対象講座なら一般教育訓練の20%が目安です。日本語教師は420時間コースなどまとまった時間と費用がかかる講座が多いものの、専門実践教育訓練の対象なら給付率50%から70%とまとまった支援を受けられる可能性があります。着付け師は講座による費用差が大きく、給付金対象講座かどうかも講座ごとに違うため、事前確認が特に重要になります。

資格費用相場の目安想定される給付区分給付率
簿記2級6万円前後一般教育訓練20%
FP2級8万〜11万円一般教育訓練20%
マンション管理士数万円〜一般教育訓練20%
宅建士数万〜20万円特定一般教育訓練40%
社会保険労務士10万〜20万円台専門実践教育訓練50〜70%
日本語教師数十万円規模専門実践教育訓練50〜70%
介護福祉士数十万〜100万円超専門実践教育訓練50〜70%

同じ資格名の講座でも、教育訓練給付金の指定を受けている講座と受けていない講座が存在します。指定を受けていない講座を選んでしまうと、どれだけ内容の良い講座でも給付金は一切受け取れません。申し込み前に厚生労働省の教育訓練講座検索システムで対象講座かどうかを確認しておく必要があります。

キャリアアップ支援事業は最大56万円、給付率70%まで補助する

教育訓練給付金以外にも、個人向けのリスキリング支援策が用意されています。経済産業省が実施するキャリアアップ支援事業では、対象講座を受講した上で転職や継続就業を行うと、最大56万円の補助が受けられます。受講費用の給付率は最大70%と高水準で、専門家によるキャリア相談や転職支援が無料で付いてくるのが特徴です。老後の再就職を見据えて新しいスキルを身につけたいシニア層にとっても選択肢の一つになります。

2025年10月には教育訓練休暇給付金という制度も始まりました。在職中に休暇を取得して教育訓練を受ける場合に、その期間の生活を支える給付金が支給される仕組みで、定年前の在職者が退職前に計画的にリスキリングへ取り組む際の後押しになります。これらの制度は年度によって要件や給付額が見直されるため、申請の際は厚生労働省や経済産業省、ハローワークの最新情報を確認してください。

シニア起業の創業補助金は上限50万〜200万円程度が相場

資格を取ったあと、雇用されるのではなく自分で開業したいと考える人向けの支援もあります。自治体による創業支援はおおむね3つのタイプに分かれていて、起業時の経費の一部を補助する創業補助金は上限50万円から200万円程度が相場とされます。自治体と信用保証協会、金融機関が協調して行う低利の制度融資、認定支援機関による無料相談や事業計画書の添削を受けられる創業塾や伴走支援も用意されています。

東京都では、地域金融機関と連携した低利融資と専門家による経営サポートを組み合わせた「女性・若者・シニア創業サポート2.0」という創業支援策があります。定年後に資格を活かして開業する際の資金調達手段として活用できます。また「高齢者向け新ビジネス創出支援事業」は、高齢者市場向けの製品やサービスの開発、改良、設備投資などを支援する制度で、都内の中小企業者などが対象です。資格取得の費用だけでなく、資格を活かして開業する段階でも公的支援が用意されているため、老後のキャリア設計は資格取得の補助金と開業の補助金を両輪で調べておくと選択肢が広がります。

受講料がそもそも無料になる公共職業訓練という選択肢

補助金で受講料の一部が戻ってくる制度とは別に、そもそも受講料が原則無料になる公共職業訓練、いわゆるハロートレーニングという選択肢もあります。ハローワークの認定を受けた上で選考試験に合格すれば受講でき、簿記検定やウェブデザイン、第一種電気工事士など、再就職に直結しやすい資格やスキルを比較的低コストで身につけられます。専門学校に個人で通う場合と比べて、費用面の負担を大きく抑えられるのが最大の利点です。

年齢制限は原則として設けられておらず、中高年層であってもハローワークの認定と選考試験を経れば受講できます。実際に50代、60代の受講者も少なくありません。ただし企業実習がセットになったコースの中には55歳未満を対象とするものもあるため、応募前に条件を確認しておいたほうがよいでしょう。

定年後や自己都合退職後に公共職業訓練を受講する場合には、見逃せない利点もあります。自己都合退職では失業手当の受給開始までに1か月から3か月の給付制限期間が設けられますが、職業訓練を受講すればこの給付制限が解除され、訓練期間中から給付を受けられるようになります。さらに訓練期間中は受講手当や通所手当が別途支給される可能性もあり、学びながら生活費の心配を減らせる組み合わせになります。

65歳以上の離職者は高年齢求職者給付金で最大50日分を一時金で受け取れる

資格取得の補助金とあわせて押さえておきたいのが、65歳以上の雇用保険被保険者が離職した際に受け取れる高年齢求職者給付金です。通常の失業給付のように月ごとに分けて支給されるのではなく、まとまった金額を一括で受け取る一時金の形式になっています。

支給額は被保険者だった期間によって決まり、1年未満なら基本手当日額の30日分、1年以上なら50日分がまとめて支給されます。基本手当日額は離職前6か月間の賃金から算出され、賃金日額のおおむね50%から80%程度が目安です。日額には上限があり、令和7年8月時点の最高額は7,255円、最低額は2,411円とされています。被保険者期間が1年以上で基本手当日額が5,000円程度の人なら、50日分でおよそ25万円がまとめて支給される計算になります。定年退職後に再就職活動を行う期間の生活費として、資格取得のための補助金とあわせて資金計画に組み込んでおきたい制度です。

高年齢雇用継続給付は2025年4月から給付率が15%から10%に下がった

老後の働き方を考える上で見逃せないのが、高年齢雇用継続給付の段階的な縮小です。2025年4月1日以降に60歳へ到達する労働者を対象に、給付率がこれまでの最大15%から最大10%へ引き下げられました。2025年4月1日より前に60歳へ到達した人には従来の給付率が適用されますが、これから60歳を迎える世代は給付水準が下がる点に注意が必要です。

2030年度をめどに制度そのものが廃止されるという見方もありますが、正式な廃止時期はまだ公表されていません。背景には高年齢者雇用安定法の改正による就業環境の改善や、同一労働同一賃金の浸透、深刻な人手不足といった事情があります。企業向けの高年齢者処遇改善促進助成金も2025年3月末で廃止されていて、企業側の自助努力による高齢者の待遇改善が今後は求められる流れです。こうした公的給付の縮小を踏まえると、資格取得によって自分自身の市場価値を高め、給付金が縮小しても働き続けられる状態を作っておく意味は大きくなっています。

給付金の申請は受講開始前のハローワーク手続きが必須になる

教育訓練給付金には年齢制限や回数制限がなく、何回でも受給できます。ただし2回目以降の利用には条件があり、前回の受給から少なくとも3年の間隔を空ける必要があります。支給要件期間についても、講座の開始日までに原則として3年以上雇用保険に加入していることが求められますが、初めて利用する場合に限り1年から2年の加入期間でも対象になります。定年退職を控えている人や、すでに退職して雇用保険から離れている人は、自分の加入履歴と前回利用時期を早めに確認しておくと、申請の段階でつまずかずに済みます。

教育訓練給付金を利用する場合、まず講座を選ぶ前の段階で、厚生労働省の教育訓練講座検索システムなどを使い、受けたい講座が給付金の対象講座に指定されているかを確認します。特定一般教育訓練や専門実践教育訓練の対象講座を利用する場合は、受講開始日のおおむね1か月前までに、訓練対応キャリア・コンサルタントによる訓練前キャリア・コンサルティングを受け、ジョブ・カードを作成した上で、住所を管轄するハローワークに事前の手続きをしておく必要があります。この事前手続きを忘れると、受講料を支払っていても給付金を受け取れなくなるため、資格取得を考え始めた段階でハローワークに相談しておくとよいでしょう。

講座を修了したら、教育訓練施設からハローワーク宛てに発行される、教育訓練経費の額を証明する領収書やクレジット契約証明書などの必要書類をそろえ、本人確認書類とあわせてハローワークに支給申請します。申請はハローワークへの来所のほか、電子申請や郵送でも可能な場合があり、代理人が申請する場合は委任状も必要です。給付金は支払った受講費用の一部が後から戻る制度なので、受講料の全額はいったん自己負担する必要がある点にも注意しておきたいところです。老後資金からまとまった費用を一時的に支出できるかどうかも、資格選びとあわせて事前に資金計画を立てておくと安心です。

会社独自のセカンドキャリア支援制度が資格取得費用を負担することもある

公的な補助金に加えて、勤務先企業が独自に用意しているセカンドキャリア支援制度の存在も見逃せません。定年や早期退職を控えた従業員に対して、退職後の学び直しや開業を経済的に後押しする社内制度で、講座の受講費用や資格取得費用、開業時の事務所開設費などを会社が一部負担する仕組みが用意されている場合があります。

早期退職制度を利用する場合には、退職一時金の割増支給や再就職支援サービス、資格取得のための特別休暇の付与といった特典が受けられることもあります。特別休暇を在職中の資格取得の勉強に充てたり、割増された退職一時金を転職活動中の生活費に充てたりすることで、金銭的な焦りを減らしながら資格取得やセカンドキャリアの準備を進められます。教育訓練給付金や高年齢求職者給付金、公共職業訓練といった公的制度と、勤務先独自のセカンドキャリア支援制度は財源も窓口も異なるため、両方を同時に活用できる場合もあります。定年前であれば、まず人事部門や労務担当に自社の退職支援制度の有無を確認し、その上でハローワークや厚生労働省の公的制度を組み合わせると、資格取得にかかる実質負担をさらに圧縮できる可能性があります。

資格の難度が上がるほど給付率も上がる仕組みになっている

ここまでの内容を整理すると、老後の資格取得における補助金の使い分けは、資格の難度と連動していることが見えてきます。簿記やFPのように比較的取り組みやすく費用も数万円から10万円程度に収まる資格は、一般教育訓練給付金の対象になっていることが多く、まずはこうした資格で公的給付の仕組みに慣れてみるのも一つの手です。宅建士のように再就職と独立の両方に直結しやすい資格は特定一般教育訓練給付金に指定されているケースがあり、まとまった額の支援が期待できます。介護福祉士や社会保険労務士、日本語教師のように専門性が高く費用も大きくなりがちな資格は専門実践教育訓練給付金の対象になっていることが多く、就職要件を満たせるかどうかで受給額が大きく変わります。修了後の就業計画まで見据えて講座を選ぶことが、給付額を最大化する鍵になります。

老後の資格取得にかかる費用は資格の種類によって数万円から100万円超まで幅がありますが、教育訓練給付金をはじめとする公的制度を使えば実質負担を20%から70%程度圧縮できる可能性があります。資格取得後に開業を目指す場合は、自治体の創業補助金や東京都のシニア向け創業支援策といった別枠の支援制度も存在します。取りたい資格の費用相場と、対象となる給付金の区分、開業する場合の追加支援をあわせて調べておくことが、無理のない資金計画につながります。制度は年度ごとに要件や給付額の見直しが行われるため、実際に申請する際は、厚生労働省の教育訓練給付制度に関する公式情報や、居住地を管轄するハローワーク、各自治体の産業振興・創業支援窓口で最新の条件を確認してください。

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