ZEHコーディネーターは受験資格に制限がない資格なので、定年が近い人や定年後の人も取得を目指せます。創設したのは一般財団法人 家電製品協会で、2026年9月に最初の試験が全国300カ所以上の会場で行われました。受験手数料は1万4000円(税込)で、学習には電子版のテキストとWEB学習動画を使います。
この資格の土台にあるZEHや断熱の知識は、老後の住まいとも深くつながっています。年金が収入の中心になると、毎月の光熱費は家計にそのまま響きます。冬場の浴室や脱衣所の寒さは、高齢者の入浴事故とも結びついています。
2025年4月からは、新築住宅の省エネ基準への適合が義務になりました。家電製品協会は、中長期で1万人の認定を目指しています。

ZEHコーディネーターの取得は受験資格不問、試験はCBT方式の1科目

ZEHコーディネーターの試験は1科目だけで、パソコン上で解答するCBT方式です。受験資格の制限はありません。協会が主に受験を見込んでいるのは、家電販売業者や地域の工務店、それに新築住宅や省エネリフォームを売る担当者などです。
ZEHコーディネーターとは、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)をはじめとする省エネ住宅を広めるために、ZEHに関わる制度や、省エネ住宅を売るのに必要な専門知識をまとまった形で学んだ人を、家電製品協会が認定する仕組みです。協会の資格制度としては、家電製品アドバイザー、家電製品エンジニア、スマートマスターに次ぐ4番目になります。2016年度に始まったスマートマスターが先行資格で、スマートハウスの専門知識を持つ人を認定しています。協会は、その運営で積み重ねた知見を新しい資格にも生かす考えです。
2026年の受験申請と試験の日程
2026年の受験申請は、7月1日の10時に受付が始まり、8月10日の23時59分に締め切られました。家電製品アドバイザーとスマートマスターは7月21日に受付が始まり、締め切りはいずれも8月10日でした。
試験を9月に始めることは、日立製作所の大隅英貴氏が新理事長に就任した2026年6月の総会で示されていました。試験期間は9月1日から14日まででした。家電製品協会の資格試験は、毎年9月と3月の年2回行う形で案内されています。
受験手数料1万4000円にはテキストと動画の費用も含まれる
1万4000円(税込)の受験手数料には、電子テキストとWEB学習動画を見るための費用などが入っています。公式のテキストと問題集は電子版しかなく、紙の冊子は用意されていません。協会は2024年に公式サイトを新しくし、テキストと問題集の電子版を出すなど、デジタル化で受験者を増やす取り組みを進めてきました。電子版だけの提供は、その流れの延長です。
合格して交付された資格は、交付日から5年間有効です。期限が来たときのために、更新の仕組みも設けられています。
老後の働き方にZEHコーディネーターを選ぶ理由は経験を生かせること
55歳から69歳の男女を対象にしたある調査では、定年後も働き続けたい理由として最も多く挙がったのが経済的な理由で、男女とも半数近くを占めていました。生きがいや社会とのつながりを理由にする人もいます。
シニア世代が資格を選ぶときは、それまでのキャリアの延長にあるものを選ぶことや、在宅や短い時間で働けることを重く見る傾向があります。一方で、年齢で書類選考に落ちるのではないかという不安を抱える人は少なくありません。事務職や専門職の求人では、実務経験と合わせて資格を求めるのが一般的です。
住宅や不動産の業界は、経験を積んだシニアが定年後に働く場として、よく名前が挙がる分野です。ZEHコーディネーターは、その業界へ入る入り口の一つになります。
想定される受験者は住宅、リフォーム、家電の3業界で約5万人
家電製品協会は、この資格を住宅業界とリフォーム業界の両方で使えるものと位置づけています。対象として見込んでいるのは、住宅販売の担当者、リフォーム販売の担当者、家電業界の人材の三つの層です。それぞれ約1万人から2万人で、合計すると5万人ほどになります。
新築住宅の省エネ基準適合は2025年4月から義務に
建築物省エネ法が改正され、2025年4月以降は原則としてすべての新築住宅と非住宅が省エネ基準を満たさなければならなくなりました。改正前にあった届出の義務と説明の義務は、このときに廃止されています。
基準に合っていなかったり、必要な手続きや書類がそろっていなかったりすると、確認済証や検査済証が交付されません。その結果、工事の着手や建物の使用開始が遅れるおそれがあります。
対象から外れるのは、延べ面積が10平方メートル以下の新築や増改築などです。増改築では、手を加えた部分が基準に合っていればよく、建物全体を基準に合わせる必要はありません。修繕や模様替えは対象になりません。
ある自治体は、2030年に断熱等性能等級5以上、つまりZEH水準へ基準を引き上げる予定だと紹介しています。省エネ住宅が特別な選択肢ではなくなっていくなかで、制度を正しく説明できる人材が求められるようになりました。
ZEHは年間の正味エネルギー消費量が概ねゼロ以下の住宅
ZEHは「ゼッチ」と読み、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの頭文字をとった言葉です。断熱性能を高めて省エネ機器で使う量を減らし、太陽光発電などで自宅でもエネルギーを生み出して、1年間の正味のエネルギー消費量を概ねゼロ以下にした住宅を指します。HEMSと蓄電池も、エアコンや太陽光発電といった設備と連携する要素に含まれます。
ZEHは、ZEHコーディネーターが扱う知識の中心です。ZEHはいくつかの区分に分かれていて、一次エネルギー消費量をどれだけ減らしたかで区分が決まります。
ZEHの4区分と削減率の条件
| 区分 | 読み方 | 一次エネルギー消費量の条件 | 対象 |
|---|---|---|---|
| ZEH | ゼッチ | 省エネ基準比で20%以上減らし、再生可能エネルギー分を足して削減率100%以上 | – |
| Nearly ZEH | ニアリー・ゼッチ | 省エネ基準比で20%以上減らし、再生可能エネルギーなどを足した削減率が75%以上100%未満 | 寒冷地、低日射地域、多雪地域 |
| ZEH Oriented | ゼッチ・オリエンテッド | 省エネ基準比で20%以上減らす(再生可能エネルギーは算入しない) | 都市部の狭小地、多雪地域 |
| ZEH+ | ゼッチ・プラス | 上位区分。ZEHの要件を満たし、さらに高度エネルギーマネジメント、断熱等性能等級6以上、一次エネルギー消費量30%以上の削減などから1つ以上 | – |
ZEH Orientedの対象になる都市部の狭小地とは、北側斜線規制がかかる用途地域にあり、敷地面積が85平方メートルに満たない土地などのことです。
ZEH+は令和7年度に要件が変わりました。削減率の要件が25%から30%以上へ上がり、断熱等性能等級6以上が必須になっています。25%と書かれた説明を見かけたら、それは改定前の内容です。
断熱等性能等級とUA値、6地域の等級5は0.60
住宅の断熱性能は、断熱等性能等級で表します。等級を決める物差しの一つが外皮平均熱貫流率、いわゆるUA値で、この値が小さいほど家の熱は外へ逃げにくくなります。等級ごとのUA値は地域によって違います。
| 地域 | 等級4(省エネ基準) | 等級5(ZEH水準) | 等級7 |
|---|---|---|---|
| 6地域(東京など) | 0.87 | 0.60 | 0.26 |
| 北海道 | 0.46 | – | – |
2025年4月の義務化で最低ラインになったのは等級4でした。等級5はZEHの基準にあたります。等級の判定には、UA値と並んで、冷房期の日射熱取得率(ηAC値)も使われます。
高齢者の浴槽での溺死は交通事故死の3倍近い

高齢になってからの暮らしでは、家の中の温度差を軽く見ることはできません。厚生労働省の人口動態統計によると、2023年の1年間に、自宅などの浴槽で溺死した高齢者は6073人でした。交通事故による高齢者の死者は同じ年で2116人でしたから、浴槽での溺死はその3倍近くにのぼります。
全国では、自宅などの入浴中の溺死で毎年5000人を超える高齢者が命を落としていて、冬場がいちばん多くなっています。入浴中の死者は全体で年間およそ1万9000人という推計も、消費者庁の発表をもとに報じられました。ヒートショックによる死亡事故の約9割は、65歳以上の高齢者です。
山形県は計画の中で、家の断熱性能が低いと住宅内に温度差が生まれ、入浴事故などの危険が高まると指摘しました。家の中の温度差をなくさない限り、ヒートショックの問題は残り続けるとする見方もあります。
消費者庁は、入浴前に脱衣所や浴室を暖めておくこと、食事や飲酒のすぐ後に入浴しないことを呼びかけています。住宅会社のなかには、高い断熱性に加えて高い気密性も欠かせないとする会社もあります。
断熱改修の前後で高齢者の血圧や歩数を測った調査
国土交通省のスマートウェルネス住宅等推進調査は、断熱改修を予定している2307軒の住宅に住む4131人を対象に、改修前の状態を調べました。改修を終えた679軒の1194人については改修後にも調査を行い、血圧や身体活動量などの健康への影響を確かめています。
断熱改修のあと、最高血圧が平均で3.5mmHg低かったという結果を、自治体が紹介しています。東京都と埼玉県の高齢者の住まいを対象にした国土交通省の技術開発事業では、日中にいる時間が長い部屋を断熱改修しています。改修前と改修後に室内環境と健康指標を計測したところ、改修から1年後の血圧は改修前よりも低い値でした。
産業技術総合研究所の調査では、内窓を取り付けてから1年後に、1日あたりの歩数の平均が統計的に意味のある差で増えていました。暖かい家は、外へ出かけようとする気持ちや、体を動かす量を保つことにも関わる可能性があります。
室温を実際に測った研究もあります。住戸ごとの実測では17℃以下の値が多く、高齢者の家だけを見ると10℃以下が多数でした。住んでいる人が感じている暖かさと、実際の室温が食い違っている例もありました。
年金暮らしの光熱費はZEHにすると年約21万円という試算

国土交通省の試算では、従来の住宅の光熱費が年間約39万円なのに対し、ZEHにすると約21万円まで抑えられます。太陽光発電の売電収入まで含めれば、光熱費はゼロに近づく想定です。
地域ごとの試算も出ています。
| 地域 | 省エネ基準ぎりぎりの省エネ住宅 | ZEH水準 | 太陽光付き |
|---|---|---|---|
| 札幌 | 年34万6000円 | 年25万円 | 年16万円 |
| 東京23区 | 年23万9000円 | 年19万3000円 | 年15万3000円 |
あくまで試算の数字です。札幌市は、暮らし方や家族の人数、天候によって結果は変わるため、光熱費がゼロになるとは保証できないと注意を呼びかけています。
太陽光発電の売電は最初の4年間が1kWhあたり24円
ZEHで電気をつくる役割を担う太陽光発電は、固定価格買取制度(FIT)で電気を売ります。2026年度に新しく認定を受けた場合、住宅用(10kW未満)の買取価格は2段階です。1kWhあたりの価格は、1年目から4年目が24円、5年目から10年目が8.3円になります。売電できる期間は、従来と変わらず10年間です。
発電した電気の70%を余剰として売り、30%を自宅で使うという前提は従来どおりです。国が後押ししているのは、蓄電池やEVを組み合わせて家で使う電気を最大限に増やす方向です。5年目以降は売電価格が下がるため、つくった電気を自分の家で使い切る設計の重みが増していきます。
令和8年度のZEH関連の補助は住宅省エネ2026キャンペーンの4事業が中心
ZEHに関係する令和8年度(2026年度)の補助は、住宅の種類や工事の中身ごとに事業が分かれています。ZEH補助金の事務を受け持つのは、一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)です。中心にある住宅省エネ2026キャンペーンは、みらいエコ住宅2026事業、先進的窓リノベ2026事業、給湯省エネ2026事業、賃貸集合給湯省エネ2026事業の4事業をまとめた呼び名です。
所管は国土交通省、環境省、経済産業省の3省で、事業ごとに対象者や申請の条件が違います。補助の対象が重ならなければ複数の事業を組み合わせて使え、まとめて一度に申請することもできます。申請の手続きをするのは、施工会社などの登録事業者です。
みらいエコ住宅2026事業の区分と条件
国土交通省と環境省が関わるみらいエコ住宅2026事業の区分は、GX志向型住宅と長期優良住宅、ZEH水準住宅です。
GX志向型住宅はすべての世帯が対象です。要件には、断熱等性能等級6以上であることや、一次エネルギー消費量を再生可能エネルギー込みで100%以上削減することなどが含まれます。ZEH水準住宅の対象は、子育て世帯または若者夫婦世帯です。床面積については、住戸が50平方メートル以上240平方メートル以下であることなどが条件です。
バリアフリー改修なども、この事業で補助を受けられる工事に入っています。
先進的窓リノベ2026事業は上限100万円、給湯省エネ2026事業は最大14万円
環境省が受け持つ先進的窓リノベ2026事業では、内窓、ガラス、玄関ドア、外窓などが補助の対象です。補助額の上限は1戸あたり100万円です。予算の上限に届くまで申請を受け付け、遅くとも2026年12月末日の申請で締め切られます。
高効率給湯器などを対象にしているのが、給湯省エネ2026事業です。エコキュートなら、加算分を含めて最大14万円の補助が受けられます。
熊本市の独自補助は1件15万円
国の事業とは別に、自治体が独自に設けている補助もあります。熊本市の場合は1件あたり15万円の補助枠があり、前期の申請期間は令和8年5月11日から10月31日までです。後期は令和8年11月2日から令和9年3月5日まで受け付けると案内されています。条件や受付期間は自治体によって大きく違います。
長期優良住宅の認定を受けると税制や金利の優遇対象に
長期優良住宅とは、長い期間にわたってよい状態で住み続けられるよう手当てをした住宅について、その建築と維持保全の計画を所管行政庁が認める制度です。認定の基準には、劣化対策、耐震性、維持管理や更新のしやすさなどがあり、維持保全の計画も求められます。省エネの判定には住宅性能表示制度の評価方法基準の等級を用い、等級4の基準を満たすことが条件として示されています。
認定住宅になると、所得税や固定資産税などの税の優遇や、住宅金融支援機構の金利の優遇を受けられたり、補助制度の対象になったりする可能性があります。認定制度は新築に限らず、増改築や既存住宅向けにも用意されています。既存住宅の認定制度は、2021年(令和3年)5月の法改正でできました。
税の優遇や補助の中身は年度ごとに変わります。使うときは、国土交通省や自治体が出している最新の情報を確かめる必要があります。
介護保険の住宅改修費は1人20万円が上限で9割を支給
老後の住まいでは、断熱と並んでバリアフリーの改修も避けて通れません。手すりの取り付けや段差の解消などの工事には、介護保険から住宅改修費が出ます。支給の上限は、要支援・要介護の区分に関係なく1人20万円です。
支給は償還払いで、実際にかかった費用の9割が戻ってきます。自己負担が1割の人が20万円の工事をすれば、支給額は18万円です。20万円を超えた部分は、すべて自分で負担します。
対象になる工事は次のとおりです。手すりの取り付け、段差の解消、滑りにくくしたり移動しやすくしたりするための床や通路の材料の変更、引き戸などへの扉の交換、洋式便器などへの便器の交換、そしてこれらにともなう工事が含まれます。
一度の工事で20万円を使い切らなかった場合、残りは次回以降に回せます。引っ越したときや、要介護度が3段階以上重くなったときは、改めて20万円まで支給を受けられます。
多くの自治体では、工事を始める前の申請が欠かせません。改修を決める前に、担当のケアマネジャーに相談してください。ケアマネジャーがいなければ、地域包括支援センターが相談先です。グループホームや有料老人ホームなどへの入所者の改修は通常想定されておらず、対象は要介護者などが実際に暮らす住宅です。
老後に向けたZEHコーディネーターの取得は住宅業界の経験を生かす選択肢
ZEHコーディネーターは、家電製品協会が2026年に試験を始めた省エネ住宅の資格で、受験資格の制限はありません。試験はCBT方式の1科目、受験手数料は1万4000円(税込)、資格は交付日から5年間有効です。
新築住宅の省エネ基準への適合は2025年4月に義務となり、2030年には基準を等級5(ZEH水準)まで引き上げる方向とされています。住宅や不動産の仕事をしてきた人にとって、定年後に経験を生かして働くための入り口になる資格です。
学ぶ内容は、老後の住まいとも重なります。浴槽での高齢者の溺死は交通事故死の3倍近くあり、国の試算ではZEHにすると年間の光熱費が約39万円から約21万円まで下がります。窓の断熱改修には国の補助を、バリアフリー改修には介護保険の住宅改修費を使えます。
試験でどの分野が問われるのか、申し込みから受験までの流れを先に押さえておきたい人は、第1回試験の出題範囲と受験の流れをまとめた記事が参考になります。








