ITパスポートに合格した人が次に目指す上位資格は、基本情報技術者試験です。この試験に年齢の上限はなく、60代や定年後の受験者も毎年合格しており、87歳で合格した人もいます。ただし基本情報技術者試験は2026年12月28日以降に休止する予定で、再開の時期はまだ発表されていません。
ITパスポートの60代の合格率は約58%で、全体の49.1%を上回りました。年齢を理由に上位資格をあきらめる必要はありません。一方で、基本情報技術者試験の合格率は令和7年度に38.3%まで下がっています。ITパスポートと同じ感覚で受けると、科目Bのプログラミング問題で足元をすくわれます。
60代でITパスポートに受かった人なら、基本情報技術者試験に挑む価値は十分にあります。ただ、2026年10月の今、最初にやることは参考書選びより先に、年内に受けられる会場が残っているかを確かめることです。休止の日程しだいで、年内に受けるか、再開まで科目Bの準備に時間を使うかが決まります。

ITパスポートの上位資格は基本情報技術者試験で、出題はプログラミングまで広がる

ITパスポート試験(IP)と基本情報技術者試験(FE)は、どちらも経済産業省が所管する国家試験「情報処理技術者試験」の区分です。実施しているのは情報処理推進機構(IPA)です。ITパスポートの上に位置する最初の区分が基本情報技術者試験で、ITパスポートからの次の一歩として選ぶ人が多い試験になっています。
ITパスポートは使う側、基本情報は作る側と支える側の試験
ITパスポートは、ITを利用するすべての社会人と学生を対象にした入門的な試験です。問われるのは、ITを使う側が知っておくべき知識が中心です。
基本情報技術者試験は、IT人材としてのスタートラインに立つ人を対象にしており、ITエンジニアの登竜門と呼ばれます。問われるのは、ITを作る側や支える側の基礎です。出題範囲はITパスポートよりも深く、プログラミング(アルゴリズムの理解を含む)、ネットワーク、データベース、セキュリティといった技術面の理解が求められます。
2つの試験の難易度の差は大きい
両者の差は、単に問題が難しくなる程度では済みません。ITパスポートが問うのはITを使う側の知識です。基本情報技術者試験では、科目Bの20問のうち16問がアルゴリズムとプログラミングの分野で、プログラムの動きを読み取る力が試験の中心に入ってきます。
ITパスポートを用語の暗記で乗り切った人ほど、この差に戸惑うでしょう。逆に言えば、どこが新しく加わるのかが分かっていれば、60代からでも学ぶ範囲を絞って準備できます。
基本情報技術者試験はCBT方式で随時受験でき、受験料は7,500円
基本情報技術者試験は、2023年4月からCBT方式で実施されています。CBT方式とは、試験会場のコンピュータで問題を解く方式のことです。年間を通じて随時受験でき、受験会場は全国のCBTテストセンターから選べます。受験料は7,500円(税込)で、申込みはオンラインで行います。
以前は、年に2回の試験日に合わせて勉強を仕上げる必要がありました。随時受験になってからは、準備ができた時点で受けられます。自分のペースで学ぶ定年後の人には、この方式が追い風になっています。
科目Aは90分で60問、科目Bは100分で20問
試験は科目Aと科目Bの2部構成です。IPAが公表している構成は次のとおりです。
| 項目 | 科目A | 科目B |
|---|---|---|
| 試験時間 | 90分 | 100分 |
| 問題数 | 60問 | 20問 |
| 出題形式 | 四肢択一式 | 多肢選択式 |
| 出題分野 | テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系 | 情報セキュリティ4問、アルゴリズムとプログラミング16問 |
| 合格基準 | 1,000点満点中600点以上 | 1,000点満点中600点以上 |
科目Aでは、情報技術の基礎知識が問われます。ITパスポートで学んだストラテジ系(経営戦略や法務など)とマネジメント系(プロジェクト管理など)の知識は、そのまま科目Aで生きます。
科目Bでは、より実践的な応用力が問われます。20問のうち16問がアルゴリズムとプログラミングの分野で、科目Bの大半はプログラムの動きを読み取って答える問題です。
合格には科目Aと科目Bの両方で600点以上が必要
合格基準は、科目Aと科目Bのそれぞれで1,000点満点中600点以上を取ることです。どちらか一方でも基準を下回れば不合格になります。科目Aで高得点を取っても、科目Bの不足は埋め合わせできません。
採点には、2023年4月の試験からIRT(項目反応理論)方式が使われています。IRT方式とは、解答の結果にもとづいて配点を算出する採点方法です。そのため、1問あたりの点数は決まっていません。何問正解すれば合格という計算は成り立たないので、6割を確実に超えるつもりで準備するのが現実的です。
基本情報技術者試験の受験者は3年続けて増え、合格率は38.3%まで低下
基本情報技術者試験の年間受験者数は、令和5年度から令和7年度にかけて増え続けています。その一方で、合格率は3年連続で下がりました。
| 年度 | 年間受験者数 | 合格率 |
|---|---|---|
| 令和5年度 | 121,611人 | 47.1% |
| 令和6年度 | 133,732人 | 前年度から低下 |
| 令和7年度 | 147,186人 | 38.3% |
受験者が増えた背景には、IT人材の需要の高まりがあります。新入社員研修で基本情報技術者試験の取得を課す企業が多いことや、学生の受験が増えたことも重なっています。
合格率が下がった要因として挙げられるのは、受験者の層が広がったことと、試験の内容が変わってきたことです。年齢にかかわらず、基本情報技術者試験はもう簡単に受かる資格ではありません。60代の受験者にとっても、それは同じです。
60代のITパスポート合格率は約58%で、全体平均の49.1%を上回った

ITパスポートの令和6年度(令和6年4月から令和7年3月)の60代(60歳から69歳)の受験者は3,760名、合格者は2,054名で、合格率は約58%でした。
| 区分 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 60代(令和6年度) | 3,760名 | 2,054名 | 約58% |
| 全体(令和6年度) | 273,905人 | 134,617人 | 49.1% |
60代の合格率は、全体の平均を上回っています。60代の受験者には、目的をもって学習時間を確保してから受験する人が多く、その準備の差が合格率に出ています。若い世代より不利だという思い込みは、この数字の前ではあまり意味を持ちません。
ITパスポートの受験者は40代以上が約28%
令和6年度の年代別の割合を見ると、ITパスポートの受験者のうち40代以上が全体の約28%を占めました。ITパスポートは若い世代だけの資格ではなく、中高年の受験者がすでに一定の割合を占めています。
応募者に占める社会人の割合は、令和8年5月度の統計で78.5%でした。学生の資格というより、働いている人や働いた経験のある人が受ける試験になっています。
基本情報技術者試験の合格者の平均年齢は25歳前後、最年長は87歳
基本情報技術者試験の合格者の平均年齢は25歳前後です。令和5年4月試験では25.1歳で、合格者の大半は22歳から25歳に入ります。受験者のおよそ7割が社会人、3割が学生という構成で、社会人の受験者はソフトウェア業や情報処理・提供サービス業の人が多くなっています。
平均が25歳前後ということは、60代の受験者が少数派であることを意味します。それでも年齢の幅は広く、最年少の合格者は小学3年生の8歳、最年長は87歳です。少数派の60代や70代、80代の中からも、合格者は毎年出ています。
令和5年4月の試験で87歳の合格者が出た
IPAの発表によると、令和5年4月に実施した試験で87歳の合格者が出ました。この回の応募者は11,294人、受験者は10,513人、合格者は5,928人でした。
それまでの最年長記録は、平成31年度春期試験の82歳でした。87歳の合格は、この記録を4年ぶりに更新したものです。
1段階上の応用情報技術者試験でも、72歳の合格者が最年長記録を更新したことを、IPAが2022年12月に発表しています。年齢の上限がない国家試験で、実際に70代や80代の合格者が出ている事実は、定年後に学び直す人にとって現実的な励みになります。
CBT会場は個室に近いブースで、周囲の年齢は気にならない
平均年齢の低い試験だと、会場で浮くのではと気にする人もいるでしょう。CBTテストセンターでは、個室に近いブースで一人ずつ受験します。周囲の年齢層が目に入ることはほとんどありません。
周りと比べる必要がないのは、会場の中だけの話ではありません。平均年齢が低い試験だからこそ、他人の合格までの期間と比べず、自分の目的に合わせた学習計画を立てるほうが続きます。
60代の受験者数はIPAの年齢別一覧表で確かめられる
60代の受験者数を正確に知りたいときは、IPAが公開している統計を開くのが確実です。基本情報技術者試験の月次の統計(PDF)には、目次に年齢別一覧表が含まれています。受験申込み時に応募者が記入したアンケートにもとづき、年齢ごとの人数が集計されています。
令和7年度については、年齢別の一覧表(Excel)もIPAの統計ページ(https://www.ipa.go.jp/shiken/reports/toukei.html)に掲載されています。60歳以上の人数を合計すれば、60代以上の受験者の規模がつかめます。
年齢別の数字は試験区分と年度を分けて読む
年齢別のデータを読むときに気をつけたいのは、試験区分ごとに数字が別だという点です。ITパスポートの60代の受験者数や合格率と、基本情報技術者試験のそれとでは、母数も合格率も異なります。ITパスポートの令和6年度の60代の合格率は約58%ですが、基本情報技術者試験は全体の合格率が令和7年度で38.3%です。同じ水準で考えるのは無理があります。
年齢のデータが受験申込み時のアンケートにもとづく集計であることも、頭に置いておきたい点です。受験者の属性を大づかみにとらえる数字として使うのが適切でしょう。
数字は年度や期間によって変わります。IPAは月次の統計を更新しているので、最新の数字は統計ページで確かめられます。
基本情報技術者試験は2026年12月28日以降に休止予定で、年内受験は会場の空き次第

基本情報技術者試験を受けようと考えている人が、いま必ず押さえておくべきなのが休止の予定です。IPAの公式ページ(2026年7月6日更新、10月3日時点の案内)によると、基本情報技術者試験は情報セキュリティマネジメント試験とともに、2026年12月28日以降に試験を休止する予定です。休止に入るまでは、CBT方式での随時実施が続きます。
休止の時期は2度変更された
休止の時期は、これまでに2度変わっています。
| 時期 | 案内された休止の時期 |
|---|---|
| 当初の案内 | 2026年4月27日以降 |
| 1度目の変更 | 2027年1月以降 |
| 現在の案内 | 2026年12月28日以降 |
当初の2026年4月27日以降という予定は、IPAが予定していたシステムのリプレースを延期したことで、いったん2027年1月以降に延びました。その後、2026年12月28日以降という形に改められています。
注意したいのは、休止が会場によって前倒しになる場合があることです。2026年12月27日よりも前に試験の実施を休止する会場もあると、IPAは案内しています。また、受験手数料のバウチャーの購入は、2026年7月31日に一時停止されました。
2027年以降の実施はIPAが2026年秋ごろに案内する予定
2027年1月以降の試験の実施について、IPAは2026年秋ごろにウェブページで知らせるとしています。再開の時期は、まだ発表されていません。
2026年10月の時点で受験を考えている人は、年内に受験できるかどうかと、休止前に受けられる会場の空き状況を、IPAの公式ページ(https://www.ipa.go.jp/shiken/2026/r08_fe-sg_exam.html)で確かめてください。年内に受けられる会場が見つからなければ、再開の案内を待つあいだに科目Bの準備を進めるほうが、時間を無駄にせずに済みます。
定年後に基本情報技術者試験を目指すなら、目的を決めて科目Bから手をつける
定年後に基本情報技術者試験を受けるなら、最初に目的を決め、次に科目Bの対策に時間を多く割くのが近道です。科目Aは、ITパスポートの延長として用語と仕組みを深める分野です。科目Bは、新しく身につける分野です。この2つを分けて考えると、学習の見通しが立てやすくなります。
目的によって学ぶ優先度は変わる
基本情報技術者試験は、ITパスポートと違ってプログラミングやアルゴリズムの理解が欠かせません。だからこそ、なぜ受けるのかを先に決めておくと、つまずいたときに踏みとどまれます。
定年後の再就職でIT関連の仕事を狙う人なら、合格そのものが目標になるので、休止の日程に合わせて受験時期から逆算します。地域のIT支援の活動に生かしたい人も、学んだ内容をそのまま活動に持ち込めます。孫世代との会話や自分の学びのために取り組む人なら、休止の日程に追われず、再開を待ってじっくり準備する選び方もできます。
ITパスポートで学んだ用語は科目Aの土台になる
ITパスポートで学ぶネットワーク、セキュリティ、経営戦略、法務などの用語は、基本情報技術者試験の科目Aの土台になります。ITパスポートに合格している人は、その知識を足がかりにして、基本情報技術者試験で新たに加わる技術系の分野を重点的に学べます。
ゼロから全範囲をやり直す必要はありません。ITパスポートの合格者は、すでに身につけた用語を確かめ直しつつ、プログラミングやアルゴリズム、データベースといった技術面の理解に時間をかければ十分です。
科目Bは擬似言語の読み方に慣れ、過去問題を繰り返す
科目Bでは、プログラムの流れを追い、結果を読み解く力が問われます。暗記だけでは対応しにくい分野です。合格への近道は、擬似言語の読み方に慣れることと、過去問題で繰り返し練習することの2つです。擬似言語とは、特定のプログラミング言語に依存せず、処理の流れを日本語に近い形で書き表したものです。
科目Bは試験全体の半分を占めるうえに、600点に届かなければそれだけで不合格になります。学習を始めるときは、科目Aの用語を固めてから科目Bに移るより、早い段階から科目Bに手をつけるほうが得策です。
ITパスポートの学習時間は初学者で150時間から180時間が目安
ITパスポートの学習時間は、学習経験によって大きく変わります。
| 学習経験 | ITパスポートの学習時間の目安 |
|---|---|
| 初学者 | 合計150時間から180時間 |
| IT用語を多少知っている人 | 100時間から150時間 |
| IT業務の経験者や情報系の学生 | 30時間から50時間程度 |
初学者の場合、基礎用語や概念のインプットに60時間から70時間をかけ、残りを過去問題の演習などに充てる配分が目安になります。ITパスポートは100問すべてが多肢選択式で、合格には全体で60%の正答率に加えて、分野ごとの基準点を満たす必要があります。
ITパスポートの準備にかけた時間は、基本情報技術者試験の学習量を見積もる手がかりになります。出題範囲が深くなり、科目Bという新しい分野が加わる以上、基本情報技術者試験ではITパスポートのときより多くの時間を見込んでおくべきです。
苦手な用語はノートと単語帳で毎日少しずつ覚える
基本情報技術者試験を独学で目指すなら、公開されている過去問題やサンプル問題を繰り返し解くことが学習の軸になります。専門用語でつまずきやすいので、苦手な用語をノートにまとめる、単語帳を移動中に見るといった工夫が役立ちます。
これらは年齢を問わず使える方法です。記憶の定着に時間がかかると感じる人ほど、週末にまとめて長時間やるより、短い時間を毎日積み重ねる学習が向いています。
休止の日程から逆算して学習計画を立てる
2026年12月28日以降の休止予定があるため、年内に受験するなら、学習期間を逆算した計画が欠かせません。会場によっては12月27日より前に休止する点も、計画に織り込んでおきます。
再開後の方式や時期はまだ決まっていません。公式の発表を随時確かめながら進めるのが安全です。
60代から基本情報技術者試験に挑む人が抱きやすい疑問
60代から受けて年齢で不利にならないかという疑問については、年齢の上限はなく、87歳の合格者も出ていると答えられます。ITパスポートでは60代の合格率が約58%と全体の平均を上回っており、年齢そのものが合格の壁になっているとは言えません。
ITパスポートに合格していれば基本情報技術者試験にもすぐ受かるのか、という疑問への答えはいいえです。基本情報技術者試験の合格率は令和7年度で38.3%で、ITパスポートの令和6年度の49.1%より低く、科目Bではプログラムを読み解く力が新たに求められます。ITパスポートの知識が生きるのは主に科目Aです。
いま申し込めばすぐ受けられるのか、という疑問については、2026年12月28日以降の休止予定と、会場ごとの前倒しの可能性を踏まえて、IPAの公式ページで年内の受験可否を確かめる必要があります。2027年以降の実施はIPAが2026年秋ごろに案内する予定で、再開の時期は未発表です。
60代のITパスポート合格者にとって基本情報技術者試験は現実的な目標、ただし日程の確認が先
ITパスポートは60代でも受験者が多く、令和6年度の60代の合格率は約58%と、全体の平均の49.1%を上回りました。上位資格の基本情報技術者試験は、受験者が増える一方で合格率が下がり、令和7年度は38.3%です。難易度は上がっていますが、年齢制限はなく、87歳の合格者も出ています。
定年後に基本情報技術者試験を目指すなら、ITパスポートの知識を科目Aの土台にして、早めに科目Bの対策へ時間を割くのが近道です。そして何より先に、2026年12月28日以降に休止予定の試験を年内に受けられるのか、IPAの最新の案内を確かめてください。年内に間に合わなくても、再開を待つ期間は科目Bの準備に使えます。
ITパスポートの出題範囲や勉強の手順をもう一度確かめたい人は、60代からのITパスポート独学の進め方をまとめた記事も参考にしてください。合格したあとの活かし方も紹介しています。








