60代で未経験から心理カウンセラーを目指す場合、年齢の上限はありません。資格の道は、大学院で学ぶ国家資格のルートから、通信講座で数か月学ぶ民間資格まで幅が広く、目的に合わせて選べます。公認心理師は大学院などの学歴要件が中心で、産業カウンセラーは日本産業カウンセラー協会の養成講座を修了すれば受験資格が得られ、e-ラーニング制の総額は392,700円(10%税込)です。
ここでは、資格の種類と費用、学び方、資格を取った後の働き方までを、2026年9月21日時点で確認できた情報をもとに書きました。定年の前後から新しい学びを始めたい方が、最初の一歩を決められる内容にしています。資格に関わる金額や試験の名称は年度で変わるため、申し込む前に各団体の公式サイトで最新の案内を確認してください。

心理カウンセラーに年齢の上限はなく、60代からでも目指せます
心理カウンセラーに定年はありません。一部の資格には受験や取得の下限年齢がありますが、上限年齢はなく、誰でも目指せます。
60代以上の相談者にとって、同世代のカウンセラーは話しやすい存在になります。仕事、子育て、介護、病気、定年、夫婦関係、親との別れといった出来事を自分でくぐってきた人は、相談者の話の重さを想像しやすいはずです。若い世代にはない強みだと私は考えます。
もちろん、年齢が有利に働くだけではありません。学ぶ時間は取りやすい反面、大学院のように長い学びを前提にする道は体力の面でも負担が大きくなります。そこで大切になるのが、自分が何のために、どんな形でカウンセラーに関わりたいのかを最初に決めることです。収入を得たいのか、地域で役に立ちたいのか、学び自体を深めたいのか。この答えで、選ぶ資格も費用も大きく変わります。
資格がなくても相談は受けられますが、信頼を得るなら資格を取るほうが有利です
カウンセリングを行うこと自体に資格は必須ではなく、独立開業にも資格は要りません。ただし、実際に活躍しているカウンセラーの大半は、国家資格か民間資格のどちらかを取得しています。クライアントの信頼を得やすいという理由で、資格があるほうが有利です。
資格は大きく3つの区分に分かれます。
| 区分 | 代表例 | 主な学び方 | 向いている目的 |
|---|---|---|---|
| 国家資格 | 公認心理師 | 大学と大学院で所定の科目を修める | 医療、福祉、教育、司法の現場で働く |
| 民間の専門資格 | 臨床心理士、産業カウンセラー | 大学院、または協会の養成講座 | メンタルヘルスや職場の相談に関わる |
| 民間の入門資格 | JADP認定メンタル心理カウンセラーなど | 通信講座 | 基礎を学び、身近な人の話を聴く力を高める |
60代の未経験者が最初から国家資格を狙うのは、時間も費用も重い選択です。入門資格や産業カウンセラーで実践に触れてから、必要なら大学院を検討する順番が現実的だと考えます。
公認心理師は大学院などの学歴要件が中心で、区分Gは第5回試験で終わりました
公認心理師とは、2017年に施行された公認心理師法に基づく、日本で初めての心理職の国家資格です。保健医療、福祉、教育、司法などの現場で、心理的支援を行う専門職として働きます。医療機関や教育機関で専門職として働きたい人にとっては、有力な選択肢です。
第8回試験の合格率は75.0%
第8回公認心理師試験は、2025年3月2日(日)に実施され、2025年3月28日(金)に合格が発表されました。合格率は75.0%です。大学院を修了したばかりの新卒者に限ると、全国平均は80.9%でした。2026年4月には、心理学専攻の大学院が第9回試験で全国平均を上回る合格率を出したと発表しており、試験は毎年続いています。
60代が国家資格を目指すときの現実
以前は、実務経験5年と講習会の受講で受験できる区分Gという特例がありました。区分Gは2022年の第5回試験までの特例で、第8回試験の時点ではすでに廃止されています。第6回試験から受験者数が大きく減ったのは、この区分Gがなくなったためです。現在の受験は、大学院(区分A)など、学歴の要件を満たす道が中心になります。
大学から大学院へ進むルートは、合わせて数年がかりです。時間、学費、体力のどれも軽くありません。それでも道が閉ざされているわけではなく、定年後に臨床心理士を目指して大学院に入学した人の事例もあります。長い学びを覚悟できる人には現実の選択肢です。
臨床心理士は日本臨床心理士資格認定協会の民間資格で、5年ごとに更新します
臨床心理士は、日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格で、主にメンタルヘルスの問題に対応する専門家です。公認心理師が国家資格であるのに対し、臨床心理士は民間資格という違いがあります。もうひとつの違いが更新で、臨床心理士は5年ごとの資格更新が義務づけられています。
公認心理師と同じく、大学院修了が基本のルートです。60代の未経験者が今日から目指す資格としては、公認心理師と同様に、長期の計画が前提になります。
産業カウンセラーは大学院に進まなくても受験資格が得られる、現実的な選択肢です
産業カウンセラーとは、日本産業カウンセラー協会が認定する資格で、傾聴の技術、メンタルヘルスの知識、キャリア支援などを体系的に学びます。現在の仕事や生活に心理学を活かしたい人に向いていて、実務に直結しやすいことが特徴です。受験資格は、協会の養成講座を修了するか、大学や大学院で心理学関連の科目を履修することで得られます。未経験の60代は、協会の養成講座を修了して受験する形になります。
試験では、産業カウンセリング、メンタルヘルス、キャリア支援、傾聴、心理学の基礎、職場支援に関する知識と技能が問われます。合格率は60%台で、養成講座で学べば十分に届く水準です。
養成講座は面接実習104時間が中心
e-ラーニング制の養成講座は、Web講義32時間、理解度確認テスト13時間、対面での講義12時間(2日間)、面接実習104時間、実習に関する在宅課題6課題で構成されています。中心は面接実習の104時間で、5つの学習要素のなかで最も長い時間を占めます。
Web講義32時間と在宅課題は自宅で進められますが、対面の講義が2日間あり、面接実習の104時間も待っています。日程と体力の負担を、申し込み前に確かめておいてください。自宅から遠い場合は、日本産業カウンセラー協会の神奈川支部や関西支部のように、支部ごとに養成講座の案内が出ているので、居住地の支部を調べるとよいでしょう。武蔵野大学の通信教育部にも、産業カウンセラーに関する案内ページがあります。
総額392,700円、登録料と更新料は各11,000円
e-ラーニング制で、受講から資格取得と登録までにかかる費用は、合計392,700円(10%税込)です。別の解説では、養成講座と受験料を合わせて33万円前後が目安とされており、講座の形式と年度で金額は動きます。
内訳を見ると、2025年度(2026年1月)試験で、実技試験のみを受験する場合の受験料は22,410円でした。合格後に協会へ資格を登録する際の登録料は11,000円(税込)、資格は5年ごとの更新制で、更新料も11,000円(税込)です。取得の費用だけでなく、5年ごとに学びと費用がかかることも、先に見込んでおきたい点です。
2026年の試験日程と名称の変更
2025年度の試験は、学科試験が2026年1月18日(日)、実技試験が2026年1月24日(土)と25日(日)に行われました。2026年7月25日(土)には、産業カウンセラー2級の実技試験が予定されていました。
大きな変更もありました。2026年3月31日付で厚生労働省の団体検定に認定され、試験の名称や受験料などが変わっています。古い記事の金額をそのまま信じず、日本産業カウンセラー協会が公開している最新の受検要領を確認してください。この記事に書いた金額や名称にも、2025年度の情報が含まれます。
民間の通信講座は4か月から始められる入り口です
通信講座は、学校に通うのが難しい社会人でも自分のペースで進められる方法です。紙のテキストとWebテキストの両方を使える講座もあります。
ユーキャンの心理カウンセリング資格取得講座は、学習期間の目安が4か月で、最長8か月まで指導サポートを使えます。ほかにも、SARAスクールの通信講座(基本コースとプラチナコース)、ヒューマンアカデミーのメンタルケア心理士講座、キャリカレのメンタル心理カウンセラーの取得講座もあります。
主な民間資格と認定団体
民間資格は、認定する団体ごとに基準が違います。名前が似ていて、混同しやすいのが難点です。
| 資格名 | 認定団体 | 確認できた特徴 |
|---|---|---|
| JADP認定メンタル心理カウンセラー | 日本能力開発推進協会 | 一般財団法人が認定 |
| メンタル士心理カウンセラー | 日本メディカル心理セラピー協会 | 受験資格がなく、年齢や学歴に関係なく学べる |
| メンタル心理インストラクター | 日本インストラクター技術協会 | 合格基準は学科試験70%以上 |
民間資格には、国家資格のような法律上の独占的な地位はありません。就職や独立に結びつくかどうかは、資格の名前より、学習内容、実習の有無、取得後の活動の場で決まります。
申し込む前に確かめたいのは、認定団体、受験資格、更新の有無、総費用の4点です。総費用には、教材費、受験料、登録料まで含めて計算します。確実に取得できるといった宣伝の言葉だけで選ぶのはやめておきましょう。
通信制大学なら、認定心理士から大学院進学まで学びをつなげられます
時間をかけて心理学を土台から学ぶなら、大学の通信教育があります。心理学の基礎を修めた証しになる認定心理士は、通信制大学の心理学の科目でも目指せます。
大手前大学の通信教育部には、約30科目の心理学の科目があり、自分の経歴に合わせて科目を選べます。産業能率大学には、心理マネジメントコースと心理カウンセリングコースがあり、3年次編入も可能で、認定心理士に対応した科目が多くそろっています。聖徳大学の心理・福祉学部心理学科は、公認心理師に対応したカリキュラムを導入していて、土日にスクーリングがあるため社会人でも通いやすい環境です。東京福祉大学の心理学部心理学科でも、認定心理士の取得を目指せます。京都橘大学の通信教育課程には総合心理学部があり、放送大学でも心理学を学べます。
大学で学ぶ利点は、基礎から体系的に学べて、その先の大学院進学にもつなげられる点です。一方で、民間の通信講座より時間も学費も大きくなります。スクーリングの有無や回数は大学で違うので、資料を取り寄せて比べてください。
資格の取得前に、傾聴ボランティアで自分の適性を試せます
傾聴とは、耳、目、心を傾けて相手の話を聴き、心に寄り添うコミュニケーションのことです。ボランティアだけでなく、家庭や職場、地域での会話にも活かせます。
傾聴ボランティアは、60代を中心に、主に50代から70代の人が活躍している活動です。子育てや定年退職をきっかけに始める人が多くいます。始め方は、傾聴ボランティア養成講座を受講し、社会福祉協議会、ボランティアセンター、地域包括支援センターに登録する形が一般的です。活動の場は、高齢者施設での傾聴訪問と、個人宅を訪ねる在宅傾聴の2つです。
養成講座は各地で開かれています。名古屋市社会福祉協議会は令和6年度の受講生を募集していました。船橋市福祉サービス公社にはシニアピア・傾聴ボランティア員養成講座があり、さいたま市シルバー人材センターも傾聴ボランティアの案内を出しています。日本傾聴能力開発協会(JKDA)は傾聴1日講座、日本傾聴塾は養成講座の一覧を公開しています。
傾聴ボランティアは心理カウンセラーの資格とは別のものです。それでも、実際に人の話を聴く場で、自分にこの学びが合うのかを、高額な講座に申し込む前に確かめられます。受講者には介護、医療、教育の仕事をしている人が少なくなく、傾聴を仕事に活かしたい30代や40代の受講も増えています。まずは、住んでいる市区町村の社会福祉協議会に問い合わせるのが早道です。
資格を取った後の相談料は1回5,000円から10,000円が相場ですが、集客が最大の壁です
カウンセリングルームでの1回1時間弱の相談は、5,000円から10,000円が相場です。カウンセラーが受け取る報酬の目安として、対面で90分あたり3,000円から4,000円という情報もあります。電話カウンセリングは、1分200円で登録する人が多く、その場合の取り分は時給6,000円、5時間で3万円の計算です。
独立開業したカウンセラーの年収は、100万円から1,000万円まで開きがあります。1時間1万円で1日5件、月に20日働けば月収100万円になる計算ですが、満席が続いたときの試算にすぎません。開業してすぐに安定した収入を得られるとは限らず、集客が最大の課題になります。
そのため、いきなり開業せず、副業や小さな活動から始める方法があります。まず月3万円を目標にする進め方もあります。60代なら、年金や貯蓄で生活の土台がある人も多いでしょう。収入を第一にせず、社会貢献や生きがいを軸に活動を組み立てる選択もできます。
仕事として探す場合は、ハローワークのシニア応援コーナーが、条件に合う求人探し、履歴書、面接の助言に対応しています。50歳以上を歓迎する求人だけを載せたシニア向けの求人サイトもあります。医療や介護の分野は、高齢化が進むなかで60代でも活躍の場が多く、産業カウンセラーの求人でも、60歳以上を対象にした募集が掲載された例があります。
60代の始め方は、目的の確認、小さな試行、資格選びの順に進めます
最初に、仕事にしたいのか、ボランティアで役に立ちたいのか、学びを深めたいのかを決めます。この目的で、選ぶ資格が変わるからです。
次に、小さく試します。通信講座の資料請求、心理学の入門書、放送大学の科目などで、心理学の学びが自分に合うかを確かめます。いきなり高額な講座に申し込むのは避けたほうがよいでしょう。傾聴ボランティアの養成講座も、この段階の有力な手段です。
そのうえで資格を選びます。医療や教育の現場で働きたいなら公認心理師や臨床心理士を長期の計画で、企業や職場のメンタルヘルスとキャリア支援に関わりたいなら産業カウンセラーを、まず基礎を学んで身近な人の話を聴く力を高めたいなら民間の通信講座を選びます。
学習の計画では、通信講座の4か月ほどから、産業カウンセラー養成講座の実習を含む長い学びまで、幅があります。面接実習の時間や対面講義の日数を見て、体力と通学の負担を事前に確かめます。
資格を取っただけでは、仕事はすぐに来ません。ボランティア、地域の相談活動、副業の電話カウンセリング、企業の相談窓口など、実践の場を早めに持つことが欠かせません。その後も、臨床心理士は5年ごと、産業カウンセラーも5年ごとの更新があります。カウンセラーは学び続ける仕事です。
学ぶ計画には、体力と通学の負担を見込んで、余裕を持たせてください。
資格の取得から活動開始までにかかる費用の一覧
この記事で確認できた金額を、一覧にまとめます。年度や情報源で金額が違うため、目安として見てください。
| 項目 | 金額・期間 | 補足 |
|---|---|---|
| 産業カウンセラー(e-ラーニング制) | 合計392,700円(10%税込) | 受講から資格取得と登録まで |
| 産業カウンセラー(別の解説) | 33万円前後 | 養成講座と受験料の合計 |
| 産業カウンセラー試験(実技のみ) | 22,410円 | 2025年度(2026年1月)試験 |
| 産業カウンセラー登録料 | 11,000円(税込) | 合格後に協会へ登録 |
| 産業カウンセラー更新料 | 11,000円(税込) | 5年ごと |
| ユーキャンの心理カウンセリング資格取得講座 | 学習期間4か月、最長8か月サポート | 金額は公式サイトで確認 |
| 傾聴ボランティア養成講座 | 地域で異なる | 社会福祉協議会などが開催 |
公認心理師や臨床心理士を目指す場合は、大学院の学費と学習期間が別に必要です。民間の通信講座や産業カウンセラーとは、費用も期間も桁が違います。
60代から始める場合によくある5つの疑問に答えます
60代からでも本当にカウンセラーになれるのか、という疑問には、なれると答えます。年齢の上限はありません。ただし、選ぶ資格と働き方で、必要な時間と費用は大きく違ってきます。
資格がないとカウンセリングはできないのか、という疑問については、資格がなくても相談を受けることは可能です。信頼を得やすいのは資格がある人なので、続けるつもりなら取得をおすすめします。
公認心理師を60代から目指せるのかという疑問には、区分Gが廃止された今、大学院など学歴要件で受験する道が中心になると答えます。長い学びが前提なので、時間と費用の計画を先に立ててください。
何から始めればよいのかという疑問には、目的を決めたうえで、通信講座の資料請求、日本産業カウンセラー協会の情報確認、地域の傾聴ボランティア講座への問い合わせといった、小さな行動から始めるのが近道だと答えます。
産業カウンセラーの費用はいくらかという疑問には、e-ラーニング制で受講から資格取得と登録まで合計392,700円(10%税込)、別の解説では33万円前後と答えます。登録料と更新料は各11,000円で、更新は5年ごとです。2026年3月31日付の団体検定の認定で試験の名称や受験料が変わっているため、申し込む前に協会の最新の案内で確かめてください。








