60代の資格ランキング上位でも稼げない資格の見分け方

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60代で人気の資格をランキングで見ると、宅地建物取引士や登録販売者、介護職員初任者研修といった実務系の資格がいつも上位に並びます。ただし人気の高さと、実際に収入や再就職につながるかどうかは、まったく別の問題です。宅建士のように事務所への設置義務がある資格であっても、資格を取っただけでは重要事項説明などの本来業務を任されないケースがあります。この記事では、通信講座大手が公表しているランキングの中身と、資格ごとに待っている現実を、内閣府が公表している統計とあわせて整理します。人気の順位だけを見て選ぶ前に、自分のキャリアや体力に照らし合わせながら読み進めてみてください。

目次

60代の就業率は84%でも70歳まで働ける企業は3割にとどまる

60代が資格取得に動く背景には、会社に残るだけでは老後の働き方を確保しきれないという事情があります。内閣府の令和7年版高齢社会白書によると、男性の就業者の割合は60〜64歳で84.0%、65〜69歳でも62.8%にのぼります。65歳を過ぎても大多数の男性が働き続けているのが今の日本の姿で、65歳以上の就業者数は22年連続で増加しています。

一方で企業側の受け皿づくりは追いついていません。令和6年の調査では、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は全体で31.9%にとどまり、中小企業で32.4%、大企業ではむしろ低く25.5%でした。70歳まで働ける環境を整えた企業は、まだ3社に1社に満たないのが実情です。2026年4月1日には改正労働安全衛生法が施行され、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善や作業管理が事業者の努力義務として明文化されました。制度は少しずつ後押しを始めていますが、会社任せにできる状況にはまだ遠いといえます。だからこそ、資格を自分の武器として持っておく意味が出てきます。

60代の資格ランキング上位は宅建士とFP、登録販売者が定番

通信講座大手ユーキャンが公表している2025年度の年間ランキングでは、1位が実用ボールペン字講座でした。デジタル化が進んでも、冠婚葬祭の芳名帳や手紙、のし袋の宛名など手書きが求められる場面は今も多く、丁寧な文字は自分の印象を左右するスキルとして年齢を問わず支持されています。2位は宅地建物取引士、3位は医療事務、4位はファイナンシャルプランナー、5位は簿記3級、6位は行政書士、7位は子ども発達障がい支援実務士、8位は登録販売者、9位はマイクロソフトオフィススペシャリスト、10位はITパスポートという顔ぶれです。

2026年上半期のランキングでも傾向は変わらず、登録販売者や簿記3級、ケアマネジャー、ファイナンシャルプランナー、ITパスポートといった実務系や独占業務系の資格が上位に定着しています。60代に絞った人気講座では、これらの実務資格に加えて韓国語などの語学講座やITパスポートにも人気が集まっており、稼ぐための資格と、生活の質を高めるための資格という二つの軸で選ばれていることがわかります。稼ぐ系では宅建士、行政書士、社会保険労務士、マンション管理士、管理業務主任者、ファイナンシャルプランナー、介護福祉士や介護職員初任者研修が定番です。

宅建士は資格だけでは重要事項説明を任されない

不動産業界では、事務所ごとに従業員5人に1人以上の割合で専任の宅地建物取引士を置くことが法律で義務付けられています。このため実務未経験であっても、資格を持っていること自体が採用側にとって大きなメリットになりやすく、シニア歓迎の求人や営業ノルマの少ない管理・事務系の職種であれば60代からでも採用される可能性は十分にあります。

ただし現実には、求人票に宅建士歓迎と書かれていても、重要事項説明などの本来業務は別の社員が担当し、雑務中心の仕事しか回ってこないケースが少なくありません。法律上必要な設置人数としてカウントされることが採用側の主目的であり、資格者としての経験を積み上げる機会が用意されているとは限らないからです。ある60代の元管理職の事例からも、資格だけで武器になるとは言いにくく、再就職でも独立でも結局は実務経験が前提になることがわかります。宅建士は入口の広さでは強い資格ですが、実務の壁は依然として高いというのが現状です。

マンション管理士は独占業務がなく年収400万円が天井になりやすい

マンション管理士の平均年収はおよそ400万円、管理業務主任者はおよそ300万から500万円程度とされています。管理業務主任者として独立すること自体は難しくありませんが、開業後に顧客を開拓し軌道に乗せるのは簡単ではありません。

独立を目指すなら、管理会社側に立つ管理業務主任者よりも、管理組合側に立ってサポートするマンション管理士のほうが向いているとされます。ただし根本的な課題として、マンション管理士には資格者にしかできない独占業務が存在しません。この一点が独立開業を難しくしている最大の要因です。単体の資格だけで食べていくのは難しく、年収を上げるには宅建士や行政書士など他の資格と組み合わせて業務の幅を広げる必要があります。ランキングの順位が高くても、独占業務があるかどうかで収入への直結度は大きく変わります。

行政書士と社労士は実務経験がなければ仕事に直結しない

行政書士と社会保険労務士はどちらも人気の高い国家資格ですが、実務経験がなければ資格を持っていても仕事に直結しにくいというのが厳しい実情です。60代で新たに取得する場合、若い受験者や実務経験者との差別化が難しく、独立開業しても顧客をゼロから開拓する体力と時間がどうしても必要になります。

豊富な実務経験と人脈がないままの資格は評価されにくく、取得してから開業までの空白期間が長くなると、その間に法改正が進んで浦島太郎化してしまうリスクもあります。ランキングの上位に入るほど人気は高くても、60代からの独立開業という文脈では、資格そのものよりも実務経験の有無が結果を分けます。

介護職員初任者研修は月給30万円で無資格より約3万円高い

介護業界は慢性的な人手不足が続いており、シニア層の採用にも積極的な業界のひとつです。介護職員初任者研修は年齢制限なく受講でき、実技演習も講師が個々の体力に配慮しながら指導するため、60代からでも十分に取得できます。

収入面では、初任者研修修了者の平均月給はおよそ30万円で、無資格者の平均給与額である約26.8万円より高い水準にあります。対人サービス職であるためAIに代替されにくく、週2日勤務や送迎・介助補助など体力に合わせた無理のない働き方を選べる求人も多くあります。60代の資格活用の中では、需要の確実さという点で最も現実的な選択肢のひとつです。一方で夜勤や入浴介助といった身体介助が伴う仕事である以上、きついと感じる場面があることも事実で、事前に職場見学や現場の声を確認しておくことが望ましいといえます。月給約30万円という水準は、無資格者の約26.8万円と比べて約3.2万円高い計算になり、初任者研修の受講費用を数か月分の給与差で回収できる可能性がある点も、他の士業系の資格と比べたときの現実的な強みです。

登録販売者は年齢不問の求人が多く60代のパート採用が現実的

登録販売者は市販薬の販売に関わる国家資格で、受験資格に年齢や学歴、性別の制限が一切ありません。薬店やドラッグストアでは法律上、薬剤師か登録販売者がいなければ医薬品の販売ができないと定められており、業界全体が慢性的な人手不足の状態にあります。そのため資格を取得すれば年齢を問わず求人ニーズがあり、60代にとって現実的な選択肢になっています。

実際の求人情報でも、60代も応募可、ミドル・シニア歓迎、年齢不問といった文言は珍しくなく、ドラッグストアのパート従業員には60代や70代が多く含まれているのが実態です。正社員としてフルタイムで働くだけでなく、パートタイムで定年制や実務経験の縛りをゆるく設定している職場も多いため、体力や生活リズムに合わせて働き方を選びやすいのも利点です。宅建士や介護資格と同様、資格があること自体が採用の決め手になりやすい独占業務型の資格として、ランキング上位の人気を裏付ける需要が存在しています。

実用ボールペン字や終活カウンセラーは収入より継続のしやすさで選ぶ

稼ぐ系の資格とは別に、実用ボールペン字や終活カウンセラー、着付け、日本語教師といった資格も60代の人気講座の常連です。これらは収入に直結させることを主目的としていない資格が多いものの、日常生活や地域活動、家族との関係の中で活かせる場面は少なくありません。

実用ボールペン字は年賀状や手紙、冠婚葬祭の場での実用性が高く、比較的短期間で成果を実感しやすいことから、ユーキャンの年間ランキングで1位を維持し続けています。宅建士や社労士のように試験の合格率や実務経験の壁に左右されにくく、練習を続けた分だけ字が変わっていくという分かりやすさが、年齢を問わず支持される理由です。終活カウンセラーのような資格も、これ単体で稼ぐことを狙うと厳しい現実に直面しやすい一方、自分自身や家族の終活の整理、地域でのボランティア活動に活かす分には十分な価値があります。稼ぐための資格を選ぶか、生活の質を高めるための資格を選ぶかによって、60代からの資格取得で求めるべき現実的な成果は変わってきます。

資格の独占業務の有無と60代からの現実的な難易度

主な資格の特徴を整理すると、以下のようになります。

資格名独占業務想定年収・月給の目安60代からの現実的な難易度
宅地建物取引士あり(設置義務)求人による採用はされやすいが実務を任されにくい
マンション管理士なし年収約400万円独立開業のハードルが高い
管理業務主任者あり(限定的)年収約300万〜500万円独立後の顧客開拓が難しい
ファイナンシャルプランナーなし実務経験に依存単独での収入化は難しい
行政書士・社会保険労務士あり実務経験に依存実務経験なしでの開業は厳しい
介護職員初任者研修なし(業界需要が高い)月給約30万円採用のハードルが低い
登録販売者あり(設置義務)求人によるパート中心に採用されやすい

この表からも読み取れるように、ランキングの順位そのものよりも、独占業務の有無と業界の人手不足の度合いが、60代からの現実的な採用可能性を左右しています。宅建士や登録販売者のように設置義務がある資格は、資格を持っているだけで採用側の法律上の要件を満たせるため、実務経験の有無にかかわらず面接まで進みやすくなります。一方でマンション管理士やファイナンシャルプランナーのように独占業務がない資格は、資格を取得した後に自分で顧客や仕事を見つける営業力が求められる点で、性質がまったく異なります。行政書士や社会保険労務士のような士業も独占業務こそありますが、開業して顧客を獲得するまでの実務経験が前提になっているため、設置義務型の資格とは難易度の中身が違うことを押さえておく必要があります。

資格の後悔は活用方法を決めずに終えたときに生まれる

ネット上には資格取得は意味がなかった、後悔したという声も一定数あります。共通しているのは、資格取得そのものをゴールにしてしまい、取得後にどう活用するかを具体的に考えていなかったパターンです。実務経験や人脈が伴わないまま資格だけを取得し、いざ仕事を探す段階で資格はあるのに採用されないという壁にぶつかるケースも目立ちます。特に士業系の資格ではこの傾向が顕著で、資格の有無よりも即戦力になれるかどうかが重視されます。

収入に結びつかなかった場合の収支の問題も見逃せません。取得に成功しても収入に結びつかなければ、受講料や教材費、試験対策費用を回収できないまま終わってしまい、収支は相当なマイナスになりかねません。難関資格ほど講座費用や独学の時間コストが大きくなるため、60代から新たに挑戦する場合はこのリスクを事前に見積もっておく必要があります。資格取得を投資と捉え、独学か通信講座か、講座費用はいくらか、合格までにどれくらいの期間がかかりそうか、取得後に想定される収入や活動内容はどのようなものかを、着手する前に具体的にイメージしておくことが欠かせません。

学び直し自体を生活の張り合いとして位置づける場合と、収入源として位置づける場合とでは、同じ資格でも成功の基準が変わります。収入源として資格を選ぶなら、独占業務の有無や業界の人手不足という条件を軸に判断し、生活の張り合いとして選ぶなら、実用ボールペン字のように継続しやすく成果を実感しやすい資格を軸に判断するというように、目的に応じて評価軸を切り分けておくことが、後悔を減らす具体的な方法になります。

60代から資格を取るのは遅すぎるのかという不安への答え

60代から資格を取るのは遅すぎるのではないかという不安を持つ人は多いはずです。ここまで見てきた事実を整理すると、遅すぎるかどうかは年齢そのものではなく、資格の種類によって答えが変わることがわかります。

宅建士や登録販売者のように事務所や店舗への設置義務がある資格は、年齢よりも資格を保有していること自体が採用側の判断材料になりやすく、60代からの取得でも入口は開いています。介護職員初任者研修も年齢制限なく受講でき、業界全体の人手不足がシニア層の採用を後押ししています。一方で行政書士や社労士、マンション管理士のように独占業務がない、あるいは開業に実務経験と人脈が前提になる資格は、60代から新たに挑戦しても若い世代や実務経験者との差を埋めにくく、遅すぎるという感覚が現実味を帯びやすくなります。

つまり60代から資格を取ること自体が遅いのではなく、独占業務の有無や業界の需要を無視して資格を選ぶことが、後から遅すぎたと感じる原因になっています。年齢を理由に選択肢を狭める前に、その資格が置かれている業界の状況を確認するほうが、はるかに現実的な判断材料になります。これまでのキャリアで培った経験と接続できる資格を選べば、60代からのスタートでも十分に間に合いますし、遠回りにもなりません。

ランキングより先に確認すべきは独占業務と実務経験の接続

60代が資格を選ぶ際に押さえておくべき視点は、独占業務があるかどうかと、これまでの実務経験や人脈と接続できるかどうかの2点に集約されます。宅建士や登録販売者のように法律上の設置義務がある資格は、実務未経験でも一定の採用メリットが生まれやすい一方、マンション管理士のように独占業務が存在しない資格は、単体では収入に直結しにくく、他の資格やこれまでのキャリアと組み合わせる工夫が必要です。

行政書士や社労士のような士業は、実務経験のない状態からの独立開業のハードルが高くなります。逆に、これまでの職種や業界での経験を活かせる資格、たとえば経理経験者が簿記や税務関連の知識を深める、営業経験者がファイナンシャルプランナーや不動産関連の資格を取るといった組み合わせは、ゼロから挑戦するよりも成果につながりやすくなります。介護業界のように構造的な人手不足が続く分野は、年齢に関係なく採用される可能性が高く、60代からの資格取得でも現実的な着地点が見えやすい分野です。逆に、資格保有者がすでに多く、業界の求人自体が伸びていない分野では、同じ順位の人気資格であっても60代からの採用にはつながりにくくなります。ランキングの人気度だけを基準にするのではなく、その資格を必要としている業界が今どれだけ人手を求めているかまで確認することが、選択の精度を上げる具体的な方法です。

人気ランキングの上位には実用ボールペン字や宅建士、ファイナンシャルプランナー、簿記、登録販売者、ケアマネジャーといった資格が並びますが、それぞれに固有の入口の広さと実務の壁があります。会社に残るだけでは老後の働き方を確保しきれない時代だからこそ、資格という武器を持つ意味は確かにあります。ただし、その武器を活かせるかどうかは資格の知名度やランキングの順位ではなく、独占業務の有無、これまでの経験との接続、そして業界の需要という条件によって大きく左右されます。ランキングを鵜呑みにするのではなく、自分のキャリアと体力、その資格で何をしたいのかという目的を先に決めることが、60代からの資格取得を実際に意味のあるものに変える道筋になります。順位ではなく独占業務の有無と実務経験との接続、そして業界の需要という観点から資格を見直すだけで、同じ人気ランキングの情報でも受け取り方は大きく変わってくるはずです。

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