就業規則の作成を社労士に頼むと、新規作成で10万円から30万円、既存規程の改訂で5万円から15万円が相場です。定年後にこの仕事を副業にしたい社会保険労務士は、勤務登録のままでは受けにくく、開業登録をして個人事務所として受託する形が基本になります。この記事は2026年10月2日時点で確認できた情報をもとに、依頼する企業の側と、定年後に受ける社労士の側の両方から、報酬相場と登録のルールを整理しました。
読み進めると、新規作成と改訂の料金差、付属規程や届出代行が別料金になる場面、顧問料の目安がわかります。さらに、開業登録が要る理由、定年後に開業した場合の収入の実態、企業が就業規則に書くべき定年と副業の条項まで、順に確認できます。

就業規則の作成義務は常時10人以上の事業場から
就業規則は、労働時間、賃金、退職、解雇など、職場の基本的なルールを書いた文書です。労働基準法は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則の作成と労働基準監督署への届出を義務づけています。作成や変更のときは、労働者の過半数で組織する労働組合を相手に、組合がなければ労働者の過半数を代表する者を相手に、意見を聴きます。その意見書を添えて届け出ます。
必ず書く項目として、始業と終業の時刻、休憩、休日、休暇、賃金の決定と計算と支払いの方法、昇給、退職に関する事項(解雇の事由を含む)があります。退職手当、賞与、安全衛生、表彰と制裁は、制度を設ける場合に書く項目です。
10人未満の事業場に作成義務はありません。それでも、トラブルを防ぐため、また助成金の申請要件との関係で、作成する会社は多くあります。従業員が10人に達したときのほか、育児・介護休業法や高年齢者雇用安定法の改正、定年や再雇用の整備、副業・兼業のルール決め、テレワークやハラスメント防止への対応が、作成や見直しのきっかけになります。
就業規則作成の報酬相場は新規10万円から30万円、改訂5万円から15万円

結論から言うと、本則の新規作成は10万円から30万円が一般的な目安です。ゼロの状態から広く見積もる情報では、10万円から50万円という幅も出ています。小規模事業者向けに、もっと低い金額で受ける事務所もあります。金額は企業規模、規程の複雑さ、関連規程の数で上下します。
新規作成と改訂で金額が分かれる
すでに就業規則を持つ会社が内容を直す場合は、5万円から15万円が目安です。法改正の反映、定年後再雇用の条項の追加、副業・兼業の条項の新設といった部分的な見直しは、この区分に入ります。
実際の依頼事例には、初期費用が約11万円で、これに月額3万円以上の顧問料が付く見積もりもありました。作成費用と顧問料をセットにして提示する事務所があるということです。見積書を見るときは、初期費用だけでなく、毎月かかる金額まで合計して比べてください。
付属規程と届出代行は別料金になりやすい
就業規則の本則とは別に、賃金規程、退職金規程、育児・介護休業規程、ハラスメント防止規程、テレワーク規程を作る場合は、追加の料金がかかります。付属規程は1規程あたり3万円から10万円が目安です。
法的な点検にあたるリーガルチェックの費用や、労働基準監督署への届出代行の費用が、別に発生することもあります。
一方で、作成と提出代行をまとめて20万円から30万円で受ける事務所が多いという説明もあります。「10万円から30万円」と「作成と提出代行で20万円から30万円」は、どこまでの業務を含むかが違うだけで、矛盾しません。社労士全体の料金は、数万円から100万円程度と幅広く語られています。この幅の広さは、事務所ごとに業務範囲が違うことの表れです。
顧問料は従業員数で月2万5千円から4万円台が出発点
社労士の顧問料は、月2万円から17万円程度と開きがあります。従業員数別の目安は次のとおりです。
| 従業員数 | 顧問料の目安(月額) |
|---|---|
| 10人から19人 | 2万5千円から3万円 |
| 20人から29人 | 3万5千円から4万円 |
| 30人以上 | 4万円から |
顧問契約に、労務相談、社会保険と労働保険の手続き、給与計算のどこまでが含まれるかで金額は変わります。就業規則の作成を顧問契約とセットにして、作成費用を割り引く事務所もあります。
自作テンプレートは安いが、会社を不利にする条文が残りやすい
就業規則はテンプレートで自作もできますし、費用は抑えられます。ただ、自社の実態と合わない条文が残ったり、法改正に追いつけなかったりします。就業規則は、トラブルのときに会社を守る根拠にも、会社を不利にする根拠にもなる文書です。自作する場合でも、最後に専門家の目を通す価値はあります。弁護士やコンサルティング会社に頼む道もありますが、料金の水準は社労士と同じではありません。
定年後に就業規則作成を副業にするなら、開業登録が前提

社労士の業務は、社会保険労務士法で3つに分かれています。就業規則の作成は、このうち2号業務にあたります。報酬を得て他人の就業規則を作れるのは社労士だけで、資格のない人が請け負うことはできません。
1号、2号、3号の業務と、副業で受けられる範囲
| 区分 | 内容 | 副業での受けやすさ |
|---|---|---|
| 1号業務 | 労働社会保険諸法令に基づく申請書や届出書の作成、提出代行、事務代理 | 開業登録が必須 |
| 2号業務 | 就業規則、賃金台帳、労働者名簿など帳簿書類の作成 | 開業登録が必須 |
| 3号業務 | 労務管理や社会保険に関する相談と指導 | 勤務社労士でも本業に支障のない範囲で行いやすい |
定年後に就業規則作成を請け負うなら、開業登録をして個人事務所で受けるのが現実的です。勤務登録のままだと、中心になるのは3号業務の相談と指導になります。
登録の条件と費用
社労士として働くには、試験に合格しただけでは足りません。全国社会保険労務士会連合会の名簿に登録する必要があり、原則として2年以上の実務経験、または事務指定講習の修了が条件です。
登録区分は、自分の事務所を構える開業登録と、事務所や企業に勤める勤務登録の2つです。費用は、初年度に十数万円、翌年以降は年に数万円から10万円前後が一般的です。開業会員として各都道府県の社労士会に入る場合の入会金と年会費は、合計で15万円から25万円程度という情報もあります。
在宅で成り立つ仕事の中身
在宅で受けやすい副業は、助成金に関する記事の執筆と、就業規則のレビューが主流です。就業規則のレビュー、助成金申請、コンサル相談、セミナー登壇も、在宅で成り立つ仕事として挙がっています。
ここで線を引いておきます。記事の執筆は独占業務ではありません。就業規則の作成そのものは独占業務にあたります。この2つを混ぜて考えると、登録区分を間違えます。
会社に勤めながら始めるなら、勤務先の副業規定が先
定年後も再雇用で働き続け、その傍らで社労士の副業を始める人は、勤務先の就業規則を最初に読んでください。副業・兼業が許可制か届出制か禁止かで、会社に伝える手順が変わります。勤務先と競合する業務に当たらないかも、確認が必要です。
定年後に開業した社労士の収入は、売上と年収を分けて読む
収入の数字は、売上なのか年収なのかを区別しないと読み違えます。
平均売上1,658万円と、年収の中央値550万円
独立開業した社労士の年間売上は、平均1,658万円です(社会保険労務士白書2024年版)。経費を引いたあとでも1,000万円規模になるという説明があります。
一方、独立社労士の年収は平均500万円から700万円、中央値550万円という数字もあります。1,000万円を超える人と500万円に届かない人に、二極化しています。勤務社労士の平均年収は400万円から500万円程度で、民間給与の平均年収460万円と並べて語られます。
売上と年収は、そもそも別の数字です。調べた対象も違います。1,658万円という売上だけを見て、自分の手取りを見積もるのは危険です。
開業1年目の顧客は3件から5件
開業のメリットとして、未経験でも始められること、開業費用が安く低コストで低リスクなこと、顧問契約が中心で売上が安定しやすいことが挙がっています。
デメリットは、仕事を取れなければ収入が不安定になることです。開業1年目の平均顧客数は3件から5件というデータがあります。戦略なしで独立すると、資金が尽きる危険があります。
定年後なら、退職金、年金、再雇用の収入を土台にして、無理のない範囲から始められます。ただし、その金額は人によって違います。この記事では、自分の場合を試算してから始めることを勧めます。
60代の合格者は例年約8%
社労士には定年がありません。60代以上の合格者は例年、合格者全体の約8%を占め、70代や80代の合格実績もあります。人事、総務、経理、営業、管理職の経験は、顧問先の相談に乗るときの説得力になります。
年収1,000万円の目安は顧問20社から30社
年収1,000万円に届く近道として、安定した顧問契約を30社以上確保しながら、助成金申請やコンサルティングのような高単価の案件を受ける方法が挙がっています。顧問契約20件で年商1,000万円に届くという営業戦略の解説もあります。
就業規則の作成は、1回の金額は大きくても単発で終わりやすい仕事です。依頼を受けたあとに顧問契約へつなげられるかどうかが、収入の安定を左右します。
企業が就業規則に書く定年後の条項は、65歳までが義務で70歳までが努力義務

依頼を受ける社労士は、定年と継続雇用の条項を必ず確認することになります。企業の側から見た枠組みを整理します。
定年は60歳未満にできず、65歳までの雇用確保が義務
高年齢者雇用安定法では、定年を定める場合、60歳を下回れません。さらに事業主は、65歳までの雇用を確保するため、次のどれかを選ぶ義務があります。定年の引き上げ、継続雇用制度の導入、定年制の廃止です。多くの企業は定年を60歳にして、65歳までの再雇用制度を置いています。
70歳までは努力義務、選べる措置は5つ
2021年4月1日に施行された改正高年齢者雇用安定法で、65歳から70歳までの就業機会を確保する措置が、事業主の努力義務になりました。対象は、定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主と、65歳までの継続雇用制度を導入している事業主です。
選べる措置は、70歳までの定年引き上げ、定年制の廃止、70歳までの継続雇用制度、70歳まで継続的に業務委託契約を結ぶ制度、70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の5つです。後ろの2つは雇用によらない創業支援等措置と呼ばれます。努力義務なので罰則はありませんが、就業規則を改定するときの検討項目になります。
業務委託契約と社会貢献事業の2つは、雇用ではなく契約で就業を支える仕組みです。
再雇用の条項に書くべき内容
再雇用を就業規則に定めるときは、定年年齢、継続雇用の対象者と基準、継続雇用後の契約期間(有期なら更新の有無と基準)、職務内容と労働時間と賃金の決め方、退職金の扱いを明確にしておくと、後のトラブルを減らせます。
再雇用後に賃金を下げるなら、同一労働同一賃金の観点で、職務内容や責任の程度と照らして説明できる形にしておく必要があります。この部分は会社ごとの事情が大きいので、専門家の確認が欠かせません。
副業・兼業の規定は、厚生労働省のモデル就業規則が届出制に改めた
厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定しています。2018年1月に公表された内容は、副業・兼業を認める方向が基本方針でした。同時にモデル就業規則も改められ、許可制から届出制に変わりました。
2020年9月の管理モデル、2022年7月の改定
ガイドラインは複数回改定されています。2020年9月の改定では、労働時間管理の考え方として管理モデルが新しく出ました。本業の事業主と副業先の事業主が、それぞれ自社での時間外労働の上限を決め、それぞれの労働者に割増賃金を支払う考え方です。2022年7月にも改定があり、労働者が適切にキャリアを選べるよう、ルールの明確化が図られました。
企業が副業規定に書く項目
就業規則に副業・兼業を定めるときは、許可制か届出制か、制限できる場合、労働時間と健康の管理方法、副業先の業務内容や時間の把握と届出の方法を決めます。制限できる場合の例は、労務提供に支障がある、業務上の秘密が漏れる、競業で会社の利益を損なう、会社の名誉や信用を傷つける、の4つです。
ガイドラインは副業・兼業の促進を基本にしつつ、過重労働の防止と健康確保のルールを求めています。
就業規則作成は依頼から運用開始まで6段階で進む
報酬の中身を理解するには、作業の流れを知っておくのが近道です。複数の社労士事務所の解説を合わせると、流れは次の6段階です。
最初のヒアリングでは、業種、従業員数、勤務形態、課題を聞き、定年や再雇用、副業・兼業、テレワークのようなテーマを洗い出します。続いて法令と会社の実態をもとに原案を作り、経営者に内容を説明して修正を加えます。そのあと従業員の過半数を代表する者などの意見を聴き、意見書を添えて労働基準監督署へ届け出ます。最後に従業員へ周知して運用を始めます。
どこまでを社労士が担当するかで、報酬は変わります。原案づくりまでなのか、意見聴取のサポートや届出代行まで含むのかが分かれ目です。
作成だけを単発で頼めるかどうかも、事務所によって違います。顧問契約が前提の事務所もあれば、スポットで受ける事務所もあります。受ける側から見ると、単発の依頼で信頼を得て、顧問契約につなげる道筋が考えられます。
社労士は助成金にも詳しいため、将来申請したい助成金の受給要件を満たす規定を、作成の段階で盛り込む提案ができます。ただし助成金の要件は年度ごとに変わります。個別の制度を使う場合は、最新の公式情報で確かめてください。
見積もりを比べるときは、本則のみか届出代行込みかを揃える
複数の事務所から見積もりを取るなら、金額より先に業務範囲を揃えてください。確認する点は2つです。就業規則の本則のみなのか、関連規程も含むのか。意見聴取のサポートと労働基準監督署への提出代行までやってくれるのか。
同じ15万円でも、本則のみの事務所と、付属規程と届出代行まで含む事務所では、中身がまったく違います。安い見積もりに飛びつく前に、この2点を聞くのが先です。
定年後に受ける側は、相場の下限ではなく業務範囲で料金を決める
定年後に社労士として就業規則作成を受けるなら、相場の幅の広さを逆手に取れます。数万円から100万円という幅は、事務所ごとに業務範囲と提供する価値が違うことの表れです。
私なら、自分が得意な領域を先に決めます。人事や総務の経験が長い人は、定年と再雇用の規程整備から入るのが自然です。会社員時代に自社の副業ルールを運用した経験があれば、副業・兼業の条項の改訂を前面に出せます。そのうえで、本則のみの金額、付属規程の追加金額、届出代行の金額を分けて提示します。料金を分けておけば、依頼側も比較しやすくなります。
値下げ競争に入るのはおすすめしません。小規模事業者向けの低価格サービスはすでにあります。そこと同じ土俵に立つと、定年後の経験という強みが活きません。
定年後の就業規則作成と副業の報酬について、よくある疑問
定年後でも社労士として開業できるのか、という疑問は多く聞きます。社労士に定年はなく、60代以上の合格者も例年約8%います。70代や80代の合格実績もあります。開業は低コストで始められますが、1年目の顧客は3件から5件が平均なので、営業の見通しは先に立ててください。
勤務しながら就業規則の作成を副業にできるか、という疑問もあります。就業規則の作成は2号業務で、兼業で受けるには開業登録が必要です。勤務登録のままでは、3号業務の相談と指導が中心になります。
企業が副業規定を作るとき、許可制と届出制のどちらがよいのかも、よく聞かれます。モデル就業規則が許可制から届出制に改められた経緯があります。ガイドラインが副業・兼業の促進を基本にしているため、まず届出制を軸に考えるのが標準的な組み立てです。制限できる場合と、労働時間や健康の管理方法を、規定にあわせて書いておきます。
まとめ
就業規則の作成費用は、新規で10万円から30万円、改訂で5万円から15万円、付属規程は1つあたり3万円から10万円が目安です。顧問料は従業員10人から19人で月2万5千円から3万円、30人以上で月4万円からとなります。
定年後に就業規則作成を副業にしたい社労士は、開業登録が出発点です。収入は、売上平均1,658万円と、年収中央値550万円を分けて読み、開業1年目の顧客が3件から5件という現実も踏まえて計画を立てます。企業の側は、65歳までの雇用確保が義務、70歳までが努力義務という枠組みと、副業・兼業を届出制で定めるモデル就業規則の考え方を押さえておくと、見積もりの話が早く進みます。
金額や登録の要件、法改正の内容は変わることがあります。最終的には、全国社会保険労務士会連合会や厚生労働省の公式情報で確認してください。
資格を活かした定年後の働き方としては、通関士の資格で貿易事務のパートに就く道もあります。時給相場などは定年後に通関士資格で貿易事務パート!シニア世代の転職成功法と時給相場を徹底解説で解説しています。








