消費生活相談員として働くための資格は、国民生活センターまたは日本産業協会が実施する試験に合格することで取得できます。受験料は14,300円で、年齢や学歴、実務経験を問わず誰でも挑戦できるため、定年後の仕事として関心を持つ人が増えています。この記事では、資格の取り方と費用、試験の内容、資格取得後の働き方までをまとめて紹介します。
消費生活相談員は、商品やサービスをめぐるトラブル、悪質商法の被害などについて、専門知識をもとに相談者へ助言し、事業者との間に立ってあっせんを行う専門職です。都道府県や市区町村の消費生活センター、消費生活相談窓口、国民生活センターなどが主な活動の場になります。2014年の消費者安全法改正で、消費生活センターを設置する地方公共団体には消費生活相談員を置くことが努力義務として定められました。それ以来、この専門職の必要性は全国的に高まっています。

消費生活相談は2025年度に100.6万件へ増加
国民生活センターの発表によると、2025年度に全国の消費生活センター等に寄せられた相談件数は100.6万件でした。2024年度の91.3万件から約9万件増えています。契約当事者が65歳以上である相談は2024年度時点で30万4130件(前年度比約2万6500件増)に達し、相談全体に占める割合は38.6パーセントと、2020年度以降で最も高い水準になりました。特殊詐欺についても2025年の認知件数は27,758件、被害額は約1,414.2億円で、件数・金額とも4年連続で増加しています。
相談内容も変化しています。インターネット通販や訪問販売、電話勧誘販売でのトラブル、架空請求、投資詐欺、高齢者を狙った特殊詐欺に加え、サブスクリプションサービスの解約トラブルへの対応が求められる場面が増えました。特に「お試し価格だと思って注文したら定期契約になっていた」という定期購入トラブルは根強く、SNSをきっかけとした投資勧誘や副業商法の相談も増加傾向にあります。相談員には、こうした最新の手口を継続的に学び続ける姿勢が求められます。
60歳以上の受験者が増えている理由
消費生活相談員の資格は、定年退職後のセカンドキャリアを模索する層から注目を集めています。60歳以上の男性の新規受験者が目立って増加しているとの報告があり、定年退職後に専門職として行政の仕事に携わりたいと考える人が増えている様子がうかがえます。
背景として、まず受験資格に年齢・性別・学歴・実務経験の制限が一切ない点が挙げられます。誰でも受験できるため、社会人経験を積んだ後に新たな専門資格として挑戦しやすいわけです。長年の社会人経験や消費者としての経験そのものが、相談業務では強みになります。契約トラブルや悪質商法の手口を理解し、相手の立場に立って冷静に助言する力は、人生経験を積んだ世代の方が発揮しやすい面があります。
もう一つの理由は、行政の非常勤職員(会計年度任用職員)としての募集が全国の自治体で継続的に行われていることです。週数日、時間を限定した勤務形態を選べる場合が多く、フルタイム労働からの緩やかな移行や、年金と組み合わせた働き方を実現しやすくなっています。消費者庁も全国の消費生活センター等で相談業務を担う人材確保を課題に位置づけ、「消費生活相談員になるための講座」や資格試験対策講座を実施するなど、担い手確保に力を入れています。人手不足の分野であることは、この資格を目指す人にとって就業機会の広さという意味でも追い風になっています。
資格は2種類の試験のどちらかに合格すれば取得できる
消費生活相談員に関連する資格は複数あり、名称が似ているため混同されやすいところがあります。消費者安全法に基づく国家資格である「消費生活相談員資格」は2016年度に創設されました。消費生活相談を行うために必要な知識及び技術を有するかどうかを判定する目的で、内閣総理大臣の登録を受けた登録試験機関が試験を実施しています。
この試験機関は二つあります。独立行政法人国民生活センターが実施する「消費生活専門相談員資格認定試験」と、一般財団法人日本産業協会が実施する「消費生活アドバイザー資格試験」です。どちらの試験に合格しても、消費者安全法上の「消費生活相談員資格」を得たことになります。このほかに、日本産業協会が講座修了者向けに認定する「消費生活コンサルタント」という資格もありますが、これは消費生活相談員資格とは別の枠組みで、講座を受講し修了試験に合格することで取得します。
二つの試験の性格は異なります。国民生活センターが実施する試験は、消費生活相談の実務に直結した法律知識を重視しており、行政の相談窓口で即戦力として働くことを想定した内容です。日本産業協会が実施する試験は、企業の消費者対応部門で求められる経営やマーケティングの視点も範囲に含まれ、企業内での消費者対応やお客様相談室での勤務を視野に入れる人に選ばれる傾向があります。自治体の消費生活相談員として働くことを主な目的にする場合は、どちらの試験に合格しても資格上は同等に扱われるため、学習スタイルや試験日程、会場のアクセスを踏まえて選べば十分です。
| 比較項目 | 消費生活専門相談員資格認定試験(国民生活センター) | 消費生活アドバイザー資格試験(日本産業協会) |
|---|---|---|
| 重視する分野 | 相談実務に直結する法律知識 | 経営・マーケティングの視点を含む |
| 想定する主な働き先 | 行政の消費生活センター | 企業の消費者対応部門も含む |
| 2026年度の第1次試験 | 10月3日・4日 | 10月20日 |
| 2026年度の第2次試験 | 10月10日・11日 | 2027年2月1日 |
試験は第1次のマークシートと論文、第2次の面接で構成される
消費生活相談員資格を取得するための試験は、第1次試験と第2次試験の二段階です。第1次試験はマークシート方式の択一式試験と論文試験からなります。マークシート試験の出題科目は、商品等及び役務の消費安全性に関する科目、消費者行政に関する法令に関する科目、消費生活相談の実務に関する科目、消費生活一般に関する科目、消費者のための経済知識に関する科目の五分野です。論文試験は、消費生活相談の実務に関する科目について、具体的な事例をもとに文章で解答する形式になっています。
第2次試験は面接試験です。消費生活相談を行う上での知識を相談事例に基づいて確認するほか、コミュニケーションスキルや聴き取り能力などの実務的な技術が評価されます。相談員としての適性、事業者との交渉力、消費者に寄り添う姿勢が総合的に見られる試験だと言えるでしょう。
合格基準は、マークシート式試験が160点満点中おおむね65パーセント以上、論文試験が100点満点中60パーセント以上、面接試験は2名の面接委員による5段階評価の合計点で5点以上とされています。合格率は年度によって変動があり、最終合格率は2023年度47.6パーセント、2024年度39.7パーセント、2025年度24.0パーセントでした。第1次試験の合格率は30パーセント前後、第1次試験を突破した人が受ける第2次試験の合格率は95パーセント前後という傾向が見られます。この試験の最大の関門は知識を問う第1次試験であり、そこを越えられれば面接自体はそれほど高いハードルではないと言えそうです。
受験資格に年齢、性別、学歴、実務経験などの条件はなく、誰でも受験できます。現役時代にどのような職業に就いていたかにかかわらず、思い立ったときから学習を始めて挑戦できる点は、この資格の大きな特徴です。
2026年度の第1次試験は10月3日と4日に実施予定
国民生活センターが実施する消費生活相談員資格試験は、例年秋に実施されます。2026年度は、第1次試験が10月3日(土曜)10時30分から12時30分、10月4日(日曜)14時00分から16時00分の日程で実施される予定です。第2次試験は10月10日(土曜)14時00分から、10月11日(日曜)10時30分からの日程で実施される予定になっています。第1次試験の会場は全国20会場、第2次試験の会場は全国の主要都市5会場です。
日本産業協会が実施する消費生活アドバイザー試験は、2026年度の場合、申込期間が2026年7月1日(水曜)12時から8月31日(月曜)23時59分までで、現在も受付が行われています。第1次試験は10月20日(火曜)、第2次試験は2027年2月1日(月曜)に実施される予定です。国民生活センター実施分より第2次試験の時期が遅く、年をまたぐ日程になる点が特徴です。試験日程や会場、出願方法は年度ごとに変更される可能性があるため、実際に受験を検討する際は、国民生活センターまたは日本産業協会の公式サイトで最新情報を確認してください。
受験料は14,300円、無料講座も活用できる
消費生活相談員資格を取得するための直接的な費用は受験料です。消費生活相談員資格試験(国民生活センター実施の消費生活専門相談員資格認定試験)の受験料は14,300円(税込)で、第1次試験と第2次試験の受験料が含まれています。
受験料以外にかかる費用としては、学習のための教材費や講座受講料があります。独学で臨む場合は、市販のテキストや過去問題集の購入費用が中心となり、数千円から2万円程度で収まることが多いです。より確実に合格を目指す場合は、通信講座や対策講座を利用する選択肢もあり、費用は数万円から十数万円程度まで、講座の内容によって幅があります。
費用を抑えたい場合には、消費者庁が実施する「消費生活相談員になるための講座」が有力な選択肢になります。令和8年度(2026年度)も、消費生活相談員の担い手確保を目的として、eラーニング形式の講座が実施される予定で、受講料はいずれも無料です。講座は録画配信方式で、消費者問題や関係法令など、消費生活相談員に必要な基礎知識を全33講座・合計35時間程度で学べる内容になっています。時間を確保しやすい世代であれば、こうした無料講座をじっくり視聴しながら学習を進めることで、実質的な費用を受験料程度にまで抑えることも可能です。自治体によっては「無料オンライン講座」を案内しているケースもあるため、消費者庁や居住する自治体の消費生活課の案内を確認しておくとよいでしょう。
総じて、消費生活相談員資格の取得費用は、受験料と教材費のみで済ませる場合は数万円程度、通信講座をしっかり利用する場合でも十数万円程度に収まることが多く、他の専門資格と比べても取得コストは抑えやすい部類に入ります。
資格取得後も、消費生活相談員としての資質向上を目的とした研修機会が用意されています。消費者庁による「消費生活相談員等スキルアップ研修」のほか、一般財団法人日本消費者協会が1970年から実施している「消費生活相談員・行政職員等研修講座」は、消費生活相談員や行政職員、消費生活コンサルタントなどを対象に、実務に役立つ内容を年2回のペースで取り上げています。資格を取得して終わりにせず、こうした研修で実務知識を継続的にアップデートしていく姿勢が、現場で長く活躍するためには欠かせません。
会計年度任用職員としての採用が中心、週26〜30時間勤務が多い
消費生活相談員資格を取得した後の主な就業先は、都道府県や市区町村が設置する消費生活センター、消費生活相談窓口です。採用形態は自治体によって異なりますが、多くの自治体では「会計年度任用職員」という非常勤の地方公務員として採用されるケースが中心になっています。会計年度任用職員は雇用期間が原則1年間で、更新にあたっては毎年度、能力実証等の手続きを経るのが一般的です。
勤務時間については、週当たり26時間から30時間程度という自治体が多いとされており、フルタイム勤務ではなく、週3日から4日程度、実働に近い時間帯で働くという形態が一般的です。この柔軟さは、無理のないペースで働きたい人にとって大きなメリットになります。年金受給とのバランスを取りながら、社会とのつながりを保ちつつ収入を得るという働き方が実現しやすくなっています。
報酬水準は自治体によって差があります。月給制の場合はおおむね月15万円から20万円程度とする自治体が多いとされる一方、日給制を採用し1日あたり1万円程度とする自治体も存在し、待遇は自治体ごとにかなりばらつきがあります。正規職員として採用されるケースは限られますが、公益財団法人横浜市消費者協会の消費生活相談員(正規職員)の例では、採用2年目の年収がおよそ312万円から317万円程度とされ、勤続年数に応じて年収が上がっていく仕組みになっている団体もあります。ただし、会計年度任用職員として働く場合は、これよりも収入水準が低くなる傾向があり、年金や他の収入と組み合わせた補完的な収入として捉えるのが現実的でしょう。
働く場所によって仕事内容にも違いがあります。自治体の消費生活センターでは、住民からの相談を直接受け、法律や制度の知識をもとに助言やあっせんを行う業務が中心です。民間企業のお客様相談室やコールセンターで働く場合は、自社製品やサービスに関する相談対応、クレーム対応、社内への情報共有が業務の中心となり、消費生活アドバイザー資格が評価されやすい傾向があります。
求人は国民生活センターのサイトと都道府県の人材バンクで探せる
資格取得後、実際にどのように就業先を見つけるかも重要なポイントです。もっとも一般的なのは、各自治体が個別に実施する消費生活相談員の採用試験・募集に応募する方法です。国民生活センターのウェブサイトには、全国各地の消費生活センター等で行われている相談員募集の情報がまとめて掲載されており、居住地域に限らず全国の募集状況を確認できます。2026年度についても、広島市、福岡市、大阪市、栃木県(宇都宮市)、群馬県など、複数の自治体で消費生活相談員の募集が行われています。
このほか、資格取得者と自治体をつなぐ「消費生活相談員人材バンク」制度を設けている都道府県も増えています。北海道、埼玉県、富山県、長野県、静岡県、愛知県、三重県など複数の都道府県が同様の人材バンクを運用しており、資格保有者や所定の研修修了者があらかじめ登録しておくことで、道内・県内の市町村における相談員の欠員や新規募集の際に紹介を受けやすくなります。居住地周辺での勤務を希望する場合は、こうした人材バンクへの登録も検討する価値があります。
募集要項に「未経験可」と明記されていないケースも多いですが、受験資格そのものに実務経験の制限がないのと同様に、資格を取得したばかりの未経験者でも応募自体は可能な自治体が大半です。自治体によっては即戦力となる相談経験者を優先する場合もあるため、資格取得後にボランティア相談員や消費者団体の活動に参加し、実務に近い経験を積んでおくことも、採用の可能性を高める方法の一つになります。
現役相談員は「ありがとう」の言葉をやりがいに挙げる
実際に働く現役の消費生活相談員の声からは、この仕事のリアルな側面が見えてきます。やりがいとして最もよく挙げられるのは、相談が解決した際に相談者本人から直接「ありがとう」と感謝の言葉をかけられる瞬間です。トラブルに巻き込まれ不安な気持ちで相談に来た人が、助言やあっせんによって安心を取り戻す過程に立ち会えることは、相談員にとって大きな支えになります。個々の相談対応にとどまらず、悪質事業者の情報を関係機関と共有することで被害の拡大を防止し、消費者被害の未然防止という形で社会全体に貢献できる点も、大きなやりがいとして挙げられています。
一方で、負担も当然あります。相談者が納得できる結果を出せるとは限らず、あっせんがうまくいかずに相談者から不満をぶつけられることもあります。悪質な事業者との交渉では精神的な負担も大きく、感情的になった相談者への対応、複雑に絡み合った契約トラブルの整理など、忍耐力と冷静な判断力の両方が求められる仕事です。働き方として検討する際は、こうした精神的な負荷がある仕事だという点も踏まえたうえで、自分の適性と体力・気力のバランスを見極めることが望ましいでしょう。
学習は法令の全体像をつかんでから過去問演習へ
消費生活相談員資格試験に向けた学習では、まず出題範囲である法令(消費者契約法、特定商取引法、割賦販売法、製造物責任法など)、消費生活相談の実務、商品やサービスの安全性に関する知識、経済の基礎知識について、市販のテキストで全体像をつかむことから始めるのが基本です。次に、過去問題集を繰り返し解き、出題傾向や頻出分野を把握していきます。論文試験対策としては、実際の相談事例を題材に、法令に基づいた助言の組み立て方を文章で表現する練習を重ねることが重要です。面接試験対策としては、消費生活センターなどで行われている模擬相談の練習会や、対策講座の面接演習を活用すると効果的とされています。
独学でも合格は十分可能とされていますが、法律用語や制度の理解に不安がある場合は、消費者庁が実施する無料または低価格の講座、あるいは民間の通信講座を組み合わせることで、効率よく学習を進められます。時間を確保しやすい人にとっては、じっくりと学習計画を立てて取り組めることも強みになるでしょう。
相談員は50〜60代が中心、年齢を気にせず挑戦できる
実際に現場で働く消費生活相談員の年齢構成を見ると、この資格が老後・シニア世代にとって現実的な選択肢であることがわかります。消費生活相談員は50歳代から60歳代の会計年度任用職員が中心を占める傾向にあり、人口規模の大きい自治体ほど50歳代以上の比率が高まる傾向が見られるとの調査結果もあります。消費生活相談員という仕事は、すでに実態として定年前後の世代が主力となって支えている分野です。これから資格取得を目指す人にとっても、同世代の相談員と一緒に働く環境が整いやすく、年齢を理由に肩身の狭い思いをする心配は少ないと考えられます。
資格を取得するメリットと注意しておきたい点
資格取得を検討する際のメリットは複数あります。受験資格に制限がなく、これまでのキャリアを問わず挑戦できる点。人生経験や社会人経験そのものが相談業務に活きやすい点。資格取得後の勤務形態が比較的柔軟で、フルタイムではない働き方を選びやすい点。資格自体は更新制ではなく、一度取得すれば失効しない点も安心材料です。社会的意義の大きい仕事であり、消費者被害の防止という形で地域社会に貢献できるというやりがいの面も見逃せません。
注意すべき点もあります。試験そのものは決して簡単ではなく、第1次試験の合格率は30パーセント前後にとどまっており、法律や経済に関する幅広い知識が求められるため、相応の学習時間の確保が必要です。資格を取得しても、必ずしもすぐに希望する自治体・条件で採用されるとは限りません。自治体ごとの採用枠には限りがあり、募集時期や条件も自治体によって異なるため、居住地域の消費生活センターの採用状況を事前に確認しておくことが望ましいでしょう。非常勤の会計年度任用職員としての採用が中心であるため、収入面では現役時代の水準を維持することは難しく、年金や資産などと組み合わせた生活設計の一部として位置づける必要があります。相談業務自体は、悪質な事業者との交渉や、精神的に負担の大きい相談者への対応など、決して楽ではない側面もあるため、体力面・精神面での適性も考えたうえで検討することが望ましいです。
消費生活相談員資格は、消費者安全法に基づく国家資格でありながら、受験資格に年齢・学歴・実務経験の制限が一切なく、誰でも挑戦できる資格です。受験料は14,300円と比較的抑えられており、消費者庁の無料講座を活用すれば、費用を抑えて取得を目指すこともできます。資格取得後は、全国の消費生活センターなどで、週数日・時間限定といった柔軟な勤務形態で働ける可能性があり、年金と組み合わせた働き方を実現しやすくなります。人生経験を強みに変えられる仕事であり、社会貢献性も高いことから、老後のセカンドキャリアとして関心を持つ人が増えています。試験自体の難易度は決して低くなく、採用条件や収入水準は自治体によって差があるため、資格取得を検討する際は、試験内容と自分の生活設計の両面から、事前にしっかりと情報収集をしておくことが大切です。








