近年、60代からのセカンドキャリアとして介護職が注目を集めています。高齢化社会の進行に伴い、介護人材への需要は年々高まっており、経験豊富なシニア世代の活躍が期待されています。介護職員初任者研修は、未経験から介護職を目指す方にとって最初の一歩となる重要な資格です。「60代では遅すぎるのでは?」「体力的についていけるか心配」といった不安を抱く方も多いでしょう。介護労働安定センターの令和7年度「介護労働実態調査」によると、2025年10月時点で、訪問介護員と介護職員を合わせた在籍者のおよそ28.5%が60歳以上です。豊富な人生経験やコミュニケーション能力は介護現場で高く評価され、体力面の懸念も適切な働き方を選ぶことで解決可能です。本記事では、60代未経験から介護職員初任者研修を取得し、介護職として活躍するための具体的な方法と注意点について詳しく解説します。

Q1: 60代未経験でも介護職員初任者研修は取得できる?年齢制限や難易度について
厚生労働省の「介護員養成研修の取扱細則」は、受講の対象を「介護の業務に従事しようとする者」などと定めているだけで、年齢の上限も下限も書かれていません。スクールが独自に年齢の条件を設けていることはあるので、申し込む前に確認しておくと安心です。実際に、60代や70代で研修を受講し、介護職として活躍している方が多数存在しており、年齢を理由に諦める必要はありません。
研修内容は合計130時間で構成されており、介護に必要な基礎知識から実技演習まで幅広く学習します。最大40.5時間を自宅学習で進め、残りの89.5時間はスクールでの通学学習が必須となります。130時間のうち75時間は「こころとからだのしくみと生活支援技術」で、食事・入浴・排せつの介助などの実技は、この科目で対面で学びます。学習期間は通学頻度によって異なりますが、週1回通学するコースでは約3.5〜4ヶ月、短期集中コースでは約1〜1.5ヶ月で修了が可能です。
修了試験の難易度は決して高くありません。修了評価は1時間程度の筆記試験で、国の細則が求める水準は「列挙・概説・説明できるレベル」です。講義の内容を復習していれば対応できる難しさです。万が一不合格になった場合でも、多くのスクールでは合格するまで何度でも追試や再試験を無料で受けられるため、年齢に関係なく安心して挑戦できます。
60代で受講する際の注意点として、記憶力の低下を心配される方もいますが、介護の知識は日常生活の延長線上にあるものが多く、これまでの人生経験が学習の助けとなります。また、同世代の受講生と励まし合いながら学習を進めることで、モチベーションの維持も可能です。重要なのは年齢ではなく、介護に対する熱意と学ぶ姿勢です。
Q2: 介護職員初任者研修の費用はどのくらい?60代でも使える支援制度はある?
受講料はスクールが自由に決めていて、国や都が示す相場はありません。同じ地域でも講座によって差が大きいので、テキスト代を含めた総額を2〜3校で比べてください。60代の方でも使える費用の支援制度もあります。
最も利用しやすいのがハローワークの職業訓練制度です。求職者支援訓練や公共職業訓練では、雇用保険の受給資格に応じて授業料が無料になる場合があります。テキスト代などは自己負担となりますが、大幅な費用削減が可能です。
教育訓練給付制度も60代の方にとって有効な選択肢です。初任者研修は「特定一般教育訓練」の対象になる講座があり、修了後に受講費用の40%(上限20万円)が支給されます。2024年10月1日以降に受講を始め、修了の翌日から1年以内に雇用保険に入って働き始めた場合は50%(上限25万円)になります。使えるのは、受講開始日に雇用保険の加入期間が3年以上ある人(初めて使う人は1年以上)か、離職から1年以内の人で、年齢の上限はありません。受講開始の2週間前までに、キャリアコンサルティングを受けてハローワークで手続きをします。対象かどうかは講座ごとに決まるので、厚生労働省の「教育訓練講座検索システム」で確かめてください。
各自治体が実施する介護職員資格取得支援事業も見逃せません。東京都の「初任者研修等資格取得支援事業」では、都内で高齢者介護の仕事に就きたい人が、費用負担なしで受講できます。東京都福祉人材センターに求職登録をして申込書を出す仕組みで、令和8年度は5月15日に受付が始まり、先着順です。年齢の上限は書かれていませんが、すでに介護の仕事をしている人や就職が決まっている人は対象外です。お住まいの都道府県や市区町村で同様の制度がないか確認してみましょう。
スクール独自の割引制度も積極的に活用したいところです。「就業割引」や「就職応援制度」など、資格取得後に提携施設への就職を条件に受講料が無料になったり、キャッシュバックされる制度があります。期間限定の割引キャンペーンが実施されることもあるため、複数のスクールで情報収集することをお勧めします。
これらの制度を組み合わせることで、実質的な負担を大幅に軽減できるため、経済的な理由で諦める必要はありません。
Q3: 60代で介護職に挑戦する強みとは?未経験でも評価されるポイント
60代の方が介護職に挑戦する際の最大の強みは、豊富な人生経験とコミュニケーション能力です。利用者の多くが同世代や少し上の世代であるため、昔話や共通の体験を通じて自然に会話が弾み、深い信頼関係を築きやすいという大きなアドバンテージがあります。
介護現場では、体力よりも「丁寧さ」「共感力」「責任感」「人間力」が重視される傾向にあります。60代の方は人生の様々な局面を経験しており、困難な状況でも落ち着いて対応できる能力を持っています。また、子育てや家事、職歴など、これまでの多様な経験が介護の仕事に直結する場面も多く、若い世代にはない独自の価値を提供できます。
企業が60代の未経験者に求める姿勢として重要なのは、継続的な勤務意欲と素直で謙虚な学ぶ姿勢です。新しい知識や介護技術に対して前向きであること、年下のスタッフから教わることに抵抗がなく、職場のルールを尊重し、柔軟に対応する姿勢が高く評価されます。
安定した勤務意欲と定着率も60代の強みの一つです。生活リズムが整っており、急な欠勤が少なく、長期的に働く意欲があるため、雇用する側にとって安心できる人材として期待されます。
未経験者が働き始めやすい職種として、デイサービス介助スタッフや生活支援ヘルパーがあります。これらの職種では、レクリエーション支援や生活援助サービスが中心となり、比較的体力的な負担が少なく、未経験者でも適性を発揮しやすいとされています。重要なのは、利用者の尊厳を大切にし、傾聴や共感力を持って接することです。
Q4: 体力に不安がある60代でも介護職は続けられる?働き方の選択肢
体力に不安があるシニア世代でも、適切な働き方を選ぶことで無理なく長く働き続けることが可能です。介護職は確かに身体的な負担を伴う側面もありますが、近年は多様な働き方の選択肢が増えており、個人の体力や健康状態に合わせた勤務形態を選べるようになっています。
日勤中心・夜勤なしの働き方が最も体力的な負担を軽減できる選択肢です。デイサービスや訪問介護など、日中のみのサービスを提供する事業所であれば夜勤はありません。また、週3日程度のパート勤務や短時間勤務など、柔軟なシフト体制を選ぶことで、体力を温存しながら働くことができます。
身体的負担が少ない業務への配置も重要なポイントです。送迎、見守り、レクリエーション支援、清掃、洗濯、調理、買い物代行などの生活援助業務や、利用者との会話、記録作成、相談業務などに集中できる環境も増えています。これらの業務は体力的な負担が軽く、60代の方の経験や人間力を活かせる分野です。
正しい介助技術の習得によって、身体への負担を大幅に軽減できます。初任者研修で学ぶ「ボディメカニクス」などの正しい介助技術は、利用者だけでなく自身の身体を守る上でも非常に重要です。適切な姿勢や動作を身につけることで、腰や膝への負担を軽減し、長期間にわたって働き続けることが可能になります。
事前の体力作りも効果的です。プランクなど体幹を鍛える運動は腰痛予防に効果的で、ウォーキングなどの有酸素運動は筋力アップだけでなく、気分転換やストレス解消にもつながります。業務の合間にできる簡単なストレッチを覚えておくことも、体力維持に役立ちます。
Q5: 介護職員初任者研修修了後の就職活動は?60代の転職成功のコツ
介護業界は慢性的な人材不足により、60代でも積極的に採用される傾向にあります。令和7年度の介護労働実態調査で在籍者数を見ると、2025年10月1日時点で、訪問介護員と介護職員の約10万4,000人のうち、60歳以上は約2万9,600人です(報告書の年齢別在籍者数から計算)。訪問介護員に限ると約4割が60歳以上です。
就職・転職サポートの活用が成功の鍵となります。資格取得スクールでは、就職・転職サポートが充実しているところが多く、資格取得後の転職支援、求人紹介、面接対策、履歴書作成のアドバイスなどを無料で受けられます。ハローワークや介護専門の転職サイトも、年齢不問の求人や資格取得支援付きの職場を探す上で有効な手段です。
職場選びのポイントとして、年齢層が幅広い職場やOJT制度が充実している職場を選ぶことが重要です。大規模な施設は職員数が多く、新人への指導体制が整っていることが多いため、未経験でも安心して仕事を覚えることができます。また、定年後の再雇用制度を導入している施設では、70代でも嘱託職員やパート勤務として働き続けている人もいます。
面接での強みのアピール方法も重要です。これまでの人生経験、培ってきたコミュニケーション能力、責任感、継続的な勤務意欲などを具体的なエピソードを交えて伝えましょう。年齢をハンディと捉えるのではなく、長年の経験から得た強みとして前向きにアピールすることが大切です。
給与面での待遇についても、厚生労働省「介護従事者処遇状況等調査」(令和6年度)では、処遇改善加算を取っている事業所で常勤・月給で働く介護職員の平均給与額は、初任者研修修了者が324,830円、資格なしが290,620円で、約3万4,000円の差でした。ただし平均勤続年数が違う(初任者研修8.8年、資格なし5.8年)ので、資格だけの差ではありません。2026年6月からは介護報酬の臨時改定で、介護従事者に月1万円の賃上げにつながる措置も始まっています。資格手当や処遇改善の配分額は事業所ごとに違うので、求人票と面接で確認してください。
最初は短時間勤務やパートタイムから始めて、慣れてきたら勤務時間を増やすという段階的なアプローチも有効です。まずは無理のない範囲で経験を積み、自信がついてから正社員への転換を目指すという選択肢もあります。
平日はまだ仕事があり、土日や夜間に通える講座を探したいという方は、働きながら介護職員初任者研修を取得する方法で、通信と通学の組み合わせ方や土日・夜間コースの選び方をまとめています。








