近年、退職後の充実した人生設計を考える際に、新たな趣味や資格取得に注目が集まっています。特に「アロマブレンドデザイナー資格」は、香りという五感に働きかける分野で自己表現ができ、日常生活の質の向上から新たなキャリア構築まで幅広い可能性を秘めた魅力的な選択肢として人気を博しています。この資格は公益社団法人日本アロマ環境協会(AEAJ)が認定する専科資格であり、精油を組み合わせてオリジナルの香りを創作する専門技術を習得できます。単なる趣味の延長ではなく、講師活動や商品開発、空間デザインなど多様な活用法があり、退職後も社会との繋がりを保ちながら新たな価値を創造できる点が大きな魅力です。また、オンライン講座の普及により地理的制約も少なく、自分のペースで学習を進められる環境が整っています。

アロマブレンドデザイナー資格とは何ですか?老後の趣味として適している理由を教えてください
アロマブレンドデザイナー資格は、精油を組み合わせてブレンドすることで、様々なシーンや目的に合ったオリジナルの香りを創作する能力を認定する資格です。公益社団法人日本アロマ環境協会(AEAJ)が2016年7月に新設した専科資格の一つで、アロマテラピーの幅広い知識を学ぶアロマ検定とは異なり、香りのブレンドという専門分野に特化していることが大きな特徴です。
この資格が老後の趣味として特に適している理由は、まず創造性と実用性を兼ね備えている点にあります。単に香りを楽しむだけでなく、自分だけのオリジナルフレグランスや空間芳香、さらには友人へのプレゼントとして香水やアロマスプレーを作成する楽しみが得られます。調香師でありアロマブレンドデザイナーの西村道子氏も、自宅のスペースごとに香りを変えることを楽しんでおり、香りが日々の生活に彩りと癒しをもたらすことを実感されています。
また、この資格は身体への負担が少なく、年齢を重ねても続けやすいという利点があります。精油との深い向き合いを通じて、今まで使ったことのない精油との出会いがあり、それぞれの個性を理解しながらブレンドスキルを向上させることができます。単に「良い香り」と感じるだけでなく、香りから「冷たさ、温かさ、甘さ、苦さ」といった多様な表現を感じ取る能力が養われ、自身の嗅覚とじっくり向き合うことで新たな発見があります。
さらに、社会との繋がりを保てる点も老後の趣味として魅力的です。講師として教える楽しみ、同じ趣味を持つ仲間との交流、地域でのワークショップ開催など、孤立しがちな老後生活において人との繋がりを創出する機会が豊富にあります。AEAJの講師である井上恵美氏も「一番精油の香りとじっくり向き合い、アロマの魅力を存分に感じられる資格」と述べており、深い満足感を得られる趣味として最適です。
60代からでもアロマブレンドデザイナー資格は取得できますか?取得方法と必要な条件について
60代からでも十分にアロマブレンドデザイナー資格の取得は可能です。この資格には年齢制限がなく、実際に多くのシニア世代の方が受講されています。取得方法は試験形式ではなく、AEAJが定める特定の条件を満たし、認定スクールでのカリキュラム履修が必須となるため、独学での取得はできませんが、逆に言えば段階的に着実に学習を進めれば確実に取得できる資格と言えます。
資格取得までの具体的な流れは以下の通りです。まずアロマテラピー検定1級に合格する必要があります。この検定では30種類の精油の特徴、効果、香りの分類、安全な使用方法などの基本知識が問われますが、暗記中心の内容なので年齢に関係なく取り組めます。次にAEAJに入会し、アロマテラピーアドバイザー資格を取得します。これは精油の安全な使い方やアロマテラピーに関連する法的知識を学ぶもので、AEAJ認定スクールでの講習会受講が必要です。
最も重要なのはAEAJ認定スクールでアロマブレンドデザイナー標準カリキュラムを修了することです。このカリキュラムは合計20時間と定められており、「精油のブレンド技術を学ぶための基礎知識」「香りの特徴をとらえる方法と香りのパレットを作る」「ブレンド実習とクリエーション」の3つの柱で構成されています。座学と実習が融合したような講座で、常に精油を扱いながら進めるため、一つ一つの香りとじっくり向き合うことができます。
2019年以降はオンライン講座での受講が認められており、これは60代以上の方にとって大きなメリットです。全国どこからでもインターネットを利用して参加でき、教材も事前に送付されるため自宅で安心して学習を進められます。講師が一人ひとりを丁寧に指導してくれるという受講生の声も多く、年齢を気にせず参加できる環境が整っています。
資格申請の受付期間は年に複数回設定されており、2025年の場合、第35期(1月6日~3月31日)、第36期(4月1日~7月31日)、第37期(8月1日~10月31日)、第38期(11月1日~2026年1月31日)と柔軟なスケジュールになっています。履修証明書をAEAJに提出し、資格登録認定料5,500円(税込)を支払うことで資格が認定されるため、複雑な手続きもありません。
アロマブレンドデザイナー資格を活かした老後のセカンドキャリアにはどのような可能性がありますか?
アロマブレンドデザイナー資格を活かした老後のセカンドキャリアは、従来の働き方にとらわれない柔軟で創造的な選択肢が豊富にあります。最も代表的なのが教育・講師活動です。AEAJ認定校での講師や自身の教室を開いての講座開催が可能で、オンライン講座の普及により場所にとらわれずに全国の受講生を対象に教えることもできます。受講生が「先生も楽しそうに教えている」と感じるような和やかで充実した授業を提供でき、子どものいる家庭向けワークショップや特定テーマのイベントなど多様なニーズに応じた講座を企画・実施できます。
オリジナル商品の開発と販売も魅力的な選択肢です。精油の特性やブレンドの理論を活かして、香水、ハンドクリーム、ボディソープ、入浴剤などの化粧品や雑貨の香りをデザインし、製品として販売する道があります。ただし、製品販売には化粧品製造販売業の許可取得や薬機法、景品表示法、特定商取引法などの規制に関する知識が必要となりますが、これまでのビジネス経験を活かせる分野でもあります。
空間デザインでの活用では、ホテル、スパ、レストラン、店舗などの施設のコンセプトに合わせて香りをデザインし、空間演出に貢献できます。香りは視覚や音と同様に五感を刺激し、居心地の良い体験を提供する重要な要素です。飲食店では店主や顧客、内装を観察し、食事の邪魔にならない香りを提案するなど、実践的なスキルを発揮できます。
また、アロマセラピストの資格と組み合わせることで、トリートメントやコンサルテーションにおいてブレンドの知識を深く活用し、クライアントのニーズに合わせて最適なエッセンシャルオイルを選定・調合できます。これにより、よりパーソナルなケアを提供することが可能になります。
さらに、地域貢献活動として公民館や幼稚園、保育園でのアロマ教室イベントの開催、認知症予防のためのアロマ教室、親子で楽しむアロマ教室など、地域社会のニーズに応じた活動も行えます。AEAJが推進する「香育」として小中高生に自然の香りの大切さを伝える教育活動にも参加でき、自身の知識やスキルを社会のために役立てることができます。
老後にアロマブレンドデザイナーとして活動するために必要なスキルと心構えは何ですか?
老後にアロマブレンドデザイナーとして成功するためには、資格取得以上の要素が重要になります。アロマブレンドデザイナーとしてフリーランス活動を行うかたみまき氏が挙げる5つの要素は、退職後のセカンドキャリア構築においても非常に参考になります。
まずスキルについて、単に「ラベンダーが安眠に良い」といった知識だけでなく、「お金をいただいて誰かの問題を解決してあげられる能力」が求められます。例えば、「ラベンダーが好みでない」という方に対して、その方に合った安眠に良い精油を提案したり、好みの香りを楽しめるようにブレンドを工夫したりする実践的な能力です。子供やペットがいる家庭での安全な精油の使い方、植物油やアルコールなどの基材の知識、心身のメカニズムに関する解剖学の知識も必要です。また、製品販売に関する薬機法、景品表示法、特商法などのビジネススキルも重要で、社会人経験がビジネスメールや企業への提案に役立ったという実例もあります。
人脈(取引先を含む)の構築では、仕事は信頼できる人からの紹介やウェブサイトからの依頼で得られることが多いため、「次につながるように、今できる仕事を120%の力でやって実績をつくる」ことが大切です。報酬が低くても将来の機会や実績、経験となる仕事であれば受ける価値があり、AEAJのイベントでのスタッフ経験が講師の仕事につながった事例もあります。
仲間については、アロマ業界内の同業者を競合と捉えるのではなく、良好なアロマ仲間を築くことの重要性が強調されています。情報交換、悩み相談、大人数の講座での協力、異なる分野の専門家との交流など、仲間がいることで助けられる場面が多くあります。
マインドでは、「誠実さ」「責任感」「積極性」といった個人の価値観が成功に繋がります。フリーランス特有の収入の不安定さとの付き合い方を学び、収入が多い時に貯蓄する、堅実に生活する、不安定さをポジティブに捉えるなどの工夫が必要です。また「ビジネスマインド」も不可欠で、どうすれば収益を生み出せるかを常に考える癖をつけることが推奨されます。流行を追うのではなく、これまでのキャリアを活かした「独自性」を見出すことが、飽和状態の市場で目立つために重要です。
最後にコミュニケーション力では、講師として受講生に心を開いてもらえるようなプロフェッショナルなコミュニケーション能力が求められます。相手の反応を見ながら論理的か感覚的かアプローチを判断し、柔軟に対応する能力、困難な交渉時でもポジティブな言葉遣いを心がけるなど、円滑な人間関係を築くための工夫が必要です。
アロマブレンドデザイナー資格の取得費用と維持費用はどのくらいかかりますか?老後の収入でも無理なく続けられるでしょうか?
アロマブレンドデザイナー資格の取得には、段階的に複数の費用が発生しますが、老後の収入でも計画的に取り組めば十分に対応可能な範囲と言えます。
まず資格取得までの費用を見てみましょう。アロマテラピー検定1級の受験料は6,600円、AEAJ年会費は12,000円、アロマテラピーアドバイザー認定講習会受講料は5,236円、資格登録認定料は10,450円です。最も大きな費用となるのがアロマブレンドデザイナー講座の受講料で、スクールによって異なりますが一般的に約60,000円~80,000円の範囲となっています。具体例として、日本アロママイスタースクールでは82,200円(税込)、ROMEOBLEUでは受講費77,000円に教材・実習費11,000円、テキスト代2,200円が加算されます。My Earthでは33種類の精油やブレンド用のスポイト、遮光瓶などが講座費用に含まれており、教材込みの価格設定となっています。
資格登録認定料は5,500円(税込)で、これらを合計すると初期費用は約15万円~20万円程度となります。ただし、これは一括で支払う必要はなく、アロマ検定から段階的に進めることで費用を分散できます。また、公式テキストは単独購入も可能なので、受講を迷っている段階で事前に内容を確認することもできます。
維持費用については、アロマブレンドデザイナー資格はAEAJの個人正会員である限り有効とされており、資格を継続するためには毎年度末までに会員更新手続き(年会費12,000円)が必要です。これは月額1,000円程度の負担となり、老後の収入でも十分に対応可能な金額です。会員更新をしない場合、この資格を含むプロフェッショナルな資格は失効するため注意が必要です。
費用対効果を考えると、この資格は単なる趣味に留まらず収益創出の可能性もあります。講師活動では1回の講座で数千円から数万円の収入が見込め、オリジナル商品の販売、空間デザインのコンサルティングなど、投資回収の機会は豊富にあります。また、精油やブレンド用品の購入など継続的な材料費は発生しますが、これらは活動の範囲に応じて調整できるため、無理のない範囲で続けることが可能です。
さらに重要なのは、非金銭的な価値です。日常生活の質の向上、創造的な自己表現、社会との繋がり、新たな人間関係の構築など、費用に換算できない価値が得られます。年金生活でも月1,000円の会員費と必要に応じた材料費程度であれば、生活を圧迫することなく長期間継続できる趣味・活動として十分に成り立ちます。









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